シラカワとは
「日本のモダン」を
コンセプトに。
1960(昭和35)年、株式会社白川製材所として製材業を開始し、1971(昭和46)年に家具製造業へと業種変換した株式会社シラカワは、長い歴史のある「飛騨家具」のメーカーとしては比較的新しい企業だ。ダイニングに「和」の雅趣を取り入れたオリジナル商品の製造販売など、伝統の技と清新なアイデアの融合をめざして前進してきた。
創業以来変わらぬ製品コンセプトは「日本のモダン」。単なる欧州の模倣ではなく、千数百年におよぶ日本文化のなかで育まれてきた「和風」という他に類を見ない世界を踏まえた「モダン」。そうした独自のデザインを標榜している。
曲面曲線の優しさで構成
される美しいシルエット
飛騨家具メーカー・シラカワと協同で新作を生み出した。緊張感を保ちつつ、曲面曲線の優しさで構成される「ラプト」シリーズ。美しいシルエットが好評のお仏壇づくりをめぐって、シラカワの方々にお話を伺った。
インタビュー
代表取締役社長 白川智彦 氏
静かなプライドを持ち
黙々と根気よく
家具製造業へと舵を切り、努力を重ねてようやく独自の「シラカワ・ブランド」が世に送り出されていったのは、高度経済成長期を経て昭和50年代。時代の価値観は、「量より質」へと大きく変化し、作れば売れる時代から消費者が商品を見極め選択する時代へと移っていった。
- ――そのころからすでに、「和風モダン」の世界を?
-
「デザインを外部に委ねるのでなく、社内でじっくり醸成し、世に問うたものがいくつかヒットしていき、そうした積み重ねによって、“シラカワの世界”を形成していきました。これはいま、若いデザイナーたちに脈々と受け継がれています」
全方位の美しさ、気品
- ――お仏壇との取り組みは?
-
「飛騨の家具づくりの伝統を、お仏壇の新しい世界構築のために、との主旨に賛同し、声を掛けていただいたことへの感謝とともにスタッフ一同全精力を傾けて臨みました」
- ――どんな点に苦心を?
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「お仏壇の場合は、閉めた姿はもちろんのこと、開けても、その中身も、すべてに端正さが求められます。いわば全方位の美しさ、気品。さらに、供養を受け止めるという役割上、細部にわたってハイレベルな繊細さが求められるということに気づきました。
このテーマを実現するために、大いに汗を流しました。取り組むことによって、大変多くのことを学ばせていただきました」
コミュニケーションの
徹底を最優先に
2017年に代表取締役に就任。創業者である初代社長は養父にあたる。
「大学では土木工学を専攻し、卒業後、もともとは建設会社で測量など土木の仕事をしていました。家具づくりの木工とは畑違い?いえ、あまりそうは考えていませんでした。“土木”にも“木”が入っていますしね(笑)。モノづくりはずっと好きでした。ひとつの街を創るのが夢でした」
- ――少年のころは?
-
「実父が銀行員で、転勤族でした。そのため転校がとても多かった。そういう思春期を過ごしたので、人と無用な摩擦を避け、円満にやっていく、きちんとコミュニケーションを築く努力をする、というクセがついていたように思います。転校少年の処世術として」
- ――なるほど、それが現在の「人当たりのよい、穏やかな物腰」の基礎となっている?
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「それはわかりませんが……。まあ、たしかに、日々の業務において、コミュニケーションの徹底は最優先に考えています。みんなで解り合うことの大切さ」
- ――シラカワの「モノづくりの姿勢」は?
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「飛騨家具メーカーはみなそうですが、静かなプライドを持っています。大げさな自己顕示をせず、黙々と根気よく、それがモットーといえばモットー」
きちんと木を削って
モノを作っていきたい
- ――企業としての現在の目標は?
-
「ずっと右肩上がりの経済成長と言われてきましたが、少子高齢化という現実もあって、その勢いは失われるかもしれません。そうした時代のなかで、奇をてらったものを求めるのではなく、地に足をつけて、きちんと木を削ってモノを作っていきたいと考えます。それを求めてくださるお客さまがいらっしゃると信じています」
- ――これからも、こころ豊かなお仏壇を?
-
「その意欲は十分あります」
インタビュー
企画技術部 浦上佳治 氏
自然の造形を
モチーフとして
思わず手を触れたくなるような優しい曲線で構成されたお仏壇「ラプト」。洗練された箱物家具で定評あるシラカワならではのシルエットを完成させたデザイナーだ。
- ――家具シリーズ「ラプト」のお仏壇ということになりますが、そのシリーズの開発コンセプトは?
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「シラカワ家具の曲線や曲面の基本は“自然の造形”です。大自然のさまざまな形態、形状をモチーフとする。『ラプト』は、鷲、鷹、鳶などの猛禽類の爪やくちばし、翼をイメージしています。力強さのなかの弾力性、包容力を表現し、深い安堵や心地よさを求めています。ウォールナット無垢材を側板や天板にふんだんに使用して、優しさの質感を高めました」
クルミ科の植物で、高級家具だけでなく楽器や工芸品の素材としても使われるのがウォールナット。耐衝撃性に富み、木肌が美しく、加工性に優れている良質の素材だ。
製造の現場で10年間
これが企画に有意義だった
- ――家具のデザインという道へはどのように?
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「大学でデザインを専攻しました。自分がかなり木の好きな人間であるということに気づきました。ぜひ“木の国”高山で仕事をしよう、と思い立ちました」
- ――初めから企画デザイン?
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「製造の現場として工場勤務を10年間。この経験が、企画に移ってからとても有意義でした。頭でっかちの発想ではなく、製造していく視点からも考えることが身についたという意味で」
内側も外側と同じレベル
の
美しさが欠かせない
- ――お仏壇との取り組みは?
-
「ラプトシリーズを生み出したのは、インテリアデザイナーの佐渡川清先生です。今回のお仏壇は、ダイニングセット、リビングセットを有するこのシリーズの、TVボード、チェストを元にして開発しました。その際、お仏壇の厳粛さ、気品をどう創り出していくかを考えぬいたのです。
パーツの数は多く、サイズが小さいので、繊細な作業の連続となりましたが、引き出しや膳引き、仏像台などの構造に関しては、はせがわ様のていねいな監修のもとに進めました」
- ――なかでもとくに苦心したのは?
-
「たくさんありますが、塗装もそのひとつです。私たちの作る家具は塗装してから組み立てるという手順です。しかし、ラプトシリーズは、その独特の形状のため、組み立てを終えてから塗装という特殊な工程を踏んでいます。お仏壇は、通常の家具と違って、内側も外側と同じレベルの美しさが欠かせません。まったく気の抜けない作業です。
しかし、それをひとつひとつクリアしていくのは、ある意味でパズルを解くような面白さもあり、企画に携わる者としては、貴重な発見も多く得られました」
何代も受け継がれていくもの
- ――これからもお仏壇を?
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「ぜひ挑戦したいです。ハード面(形状)からではなく、まずソフト面(祈りのスタイル)から発想していくとどんな可能性があるだろう、と考えています。
お仏壇は、一生もの、いえ、何代も受け継がれていくものですから、取り組み甲斐がとても大きいということが、仕事をやり終えた今のいちばんの実感です」
インタビュー
製造部 尾上昭彦 氏
いのちの通った
優美な姿
企画技術部が仕上げた図面の、その背後にある「考えの筋道」といったものまでも読み取り、忠実に、ともすれば発展的に実際の形にしていくのが製造部の使命だ。
- ――ご苦労はどんな点に?
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「お仏壇は未知の領域でした。すべてが勉強、というところから始めました。まず印象的だったのは、サイズの小さなパーツが測り知れずあることでした。“こころの家具”という繊細さ。慎重の上にも慎重を期して仕事を進めました」
- ――企画技術部との連携は?
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「担当デザイナーである浦上とは同世代ということもあり、求めていることがよく理解できました。うまく連携できたと思っています。
開けても閉めても、中身も、つまり全方位での端正さが要求されます。通常の家具にある“裏”も“陰”もなく、すみからすみまで人目に晒される。そのことを肝に銘じて造っていきました」
家族の精神的なものを
凝縮していく
- ――お仏壇ラプトとして、最も大事にしたのは?
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「やはり、丸みあるデザインです。思わず、そっと触って体温を感じてみたくなるような、いのちの通った優美な姿。それはとりわけ角の丸みに象徴されます。難しく、いっさい気を抜けない工程ですが、ここが腕の見せどころ、という気持ちもありました」
- ――やりがいは?
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「やはり、伝承ということを意識します。家族の精神的なものを凝縮していく。それがやりがいの中心です」
リンク
- シラカワ
- http://www.shirakawa.co.jp/