お仏壇のリンとは?意味と役割を解説
お仏壇へお参りする際、リンを鳴らすことが形式化していますが、そもそもリンは何のために鳴らすのでしょうか。ここではリンに関する基礎知識について解説します。
リン(おりん)とは?
リンとは、読経の際に音を鳴らす「梵音具(ぼんおんぐ)」という仏具の一種です。お仏壇のお参りで使われるリンは、金属でできたお椀型のものが主流で、縁を棒で叩くと「チーン」と澄んだ音がするのが特徴です。
漢字で「鈴」や「輪」と表記することもあります。宗派によって「鐘」や「鏧(きん)」など呼び方が異なります。
古くから禅宗(曹洞宗、臨済宗など)で使われてきましたが、他の宗派にも広まり、現在では数多くの宗派で用いられています。
リンを鳴らす意味・役割
リンを鳴らす意味・役割は大きく分けて3つあります。
1. 読経時に合図とするため
リンは元々、禅宗の読経の始まり・区切り・終わりの合図として使われてきました。経本にリンを鳴らす目印が付いていることもあります。また、お経の音程やリズム、スピードなどを合わせるためにも使われ、実用的な役割を持っています。
2. 場を清め、邪気を払うため
リンの音により、荘厳な雰囲気を作り出し、人々の邪念を払いのける意味があります。
リンは実用的な役割だけでなく、お参りする人の心を鎮める精神的な役割・意味合いも持ち合わせています。
3. 故人様に祈りを届けるため
リンの澄んだ音色に乗って、供養の祈りが極楽浄土の故人様まで届くといわれています。
お仏壇の前で読経することが少なくなった現代では、これからお仏壇にお参りすることを故人様へお知らせする意味合いでリンを鳴らすケースも多く見られます。
リンの選び方と5つのポイント
リンには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。下記の5つのポイントを考慮し、長く使用するのに適したリンを選びましょう。
1. 形 2. 大きさ 3. 音色 4. 素材 5. 価格
ひとつずつ詳しく解説します。また、合わせて必要になる仏具や宗派によるリンの違いについても触れています。
1. 形
お椀型のリンが最も一般的で、「昔ながらのリン」のイメージがありますが、近年では洋風(家具調)のお仏壇に合わせたモダンデザインのリンも増えてきています。
一般的なお椀型のリンにするか、モダンデザインのリンにするか、まずは検討されるとよいでしょう。
モダンデザインのリンは「人気のおしゃれなデザインのリン」で詳しく紹介しています。
2. 大きさ
リンはお仏壇の大きさに合わせたサイズを選ぶとよいでしょう。伝統的なお椀型のリンについて、お仏壇別におすすめの大きさを解説します。
【お仏壇別】おすすめのリンの大きさ
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上置き仏壇の場合
2.3寸~2.5寸程度(直径約7.5cm~8cm) -
床置き仏壇の場合
2.5寸~3.0寸程度(直径約8cm~9cm)
※モダンデザインのリンは形状によって大きさが異なります。
3. 音色
リンを選ぶ上で、音色も重要な要素です。
リンの音色は主に、サイズ、素材によって異なります。一般的に、サイズが大きいほど音が低く、小さいものは音が高くなります。また、使われている金属によって、音の余韻・残響に違いがあります。
長く使うお仏具ですので、実際に仏壇・仏具店などで音の響きを確認し、気に入った音色のリンをお選びになることをおすすめします。
4. 素材
リンは、使われている金属(素材)によって色味や音色に差があります。
ここではリンに使われる代表的な素材について解説します。
真鍮
銅と亜鉛を混ぜ合わせた合金で、りんの素材として最も一般的です。種類によっては、表面に錆や汚れ防止のコーティングがされているものもあります。
他の素材に比べて音の余韻は短めですが、お求めやすい価格帯の商品が多いのが特徴です。
佐波理・砂張(さはり)
銅と錫(すず)から成る高級な合金で、古くからリンの素材として使用されています。佐波理製のリンを叩くと、しっとりとしたのびやかな良い音色が響きます。よく鳴ることから「響銅」とも呼ばれます。
非常に硬い金属ですが衝撃に弱く、落とすと割れることがあります。
金(18金)
金は古代から最も尊い金属として扱われており、リンの素材として使われることもあります。音を鳴らすと、非常にのびやかで余韻が残ります。
貴金属のため大変高価ですが、音がよく、リンとして最高級の素材です。
5. 価格
リンは、素材(使用されている金属)によって価格に大きな差があります。金が最も高価で、次いで佐波理、真鍮の順になります。
また、製造技法によっても価格に差が出ます。表面を金鎚で叩いて細かい凹凸を付けていく「鎚目(つちめ)仕上げ」や、金属の表面を鏨(たがね・のみ)で切ったり押したりして、模様を彫り込む「彫金(ちょうきん)」など、職人の手の込んだ技法が用いられているものは高価格となります。
素材・製造技法と価格の兼ね合いを考慮してリンを選びましょう。
合わせて必要な仏具
リンは単品で使用することができません。「リン棒」、「リン布団」、「リン台」と合わせて一式になります。忘れずに準備しましょう。
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リン棒
リンを打ち鳴らすための棒です。木製で布や皮が巻かれているものが一般的です。 -
リン布団
リンの下に敷いて使う、リン専用の座布団です。丸型や六角型の種類があります。 -
リン台
リンとリン布団を乗せる台座です。リンを床に置いて使う場合必須です。
※近年のモダンデザインのリンの場合、リン布団やリン台が省略されているものもあります。
宗派によるリンの違い
基本的にはお好きな音色やデザインのリンをお選びいただいて問題ありません。しかし、浄土真宗の場合はお寺から指定がある場合がありますので、購入前に菩提寺にご確認いただくと安心です。
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浄土真宗本願寺派(西)
六角形または丸型のリン台の上にリン布団を置き、お椀型のリンを飾ります。 -
浄土真宗真宗大谷派(東)
四角形のリン台に「金襴輪(きんらんわ)」という仏具を置き、その上にお椀型のリンを置きます。
いつ何回鳴らす?りんの正しい鳴らし方
普段何気なく鳴らすリンですが、正式には宗派によって鳴らす回数やタイミングに決まりがあります。ここではリンの正しい扱い方や鳴らし方について詳しく解説します。
リンの正しい打ち方・鳴らし方
リン棒を人差し指と親指でつまむように持ち、リンの縁を外側もしくは内側から優しく叩きます。
真上から押し付けるように強く叩くのは避けましょう。音が響きづらいだけでなく、リンによっては割れる原因になることがあります。
リンはお仏壇のどこに置く?
リンはお仏壇の右端手前に置いて使用します。木魚がある場合は、お仏壇の右側に木魚、左側にリンを置くことが一般的です。
リン台ごと床に置くのが正式な形ですが、近年ではリン台は用いず、リン布団を直接お仏壇の膳引き(薄引き出し)などに置くパターンも増えています。
■お仏具の飾り方について詳しくはこちら
宗派やお仏壇の大きさに合わせた仏具の飾り方について、詳しく図解しています。
リンを鳴らすタイミング
読経の決められたタイミングでリンを鳴らすことが本来の使い方であり、お参りのみで読経しない場合はリンを鳴らす必要がないとされています。
ただし、現代ではお仏壇への読経の有無に関わらず、お参り前の合図として使用されています。お線香をあげ、手を合わせる前に「これからお参りします」という気持ちを込めて鳴らすケースが一般的です。
リンを鳴らす回数
リンは、お仏壇の前で2回鳴らすことが一般的です。1回目は軽く打ち、仏様の慈悲を願います。2回目は少し強めに打ち、仏様への信仰(仏様へ帰依すること)を表します。
ただし、正式には宗派によってリンを鳴らす回数やタイミングが異なります。ここでは主要な八宗についてそれぞれの回数を解説します。
【宗派別】リンの回数とタイミング
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天台宗
読経の始めに2回、読経が終わるごとに1回、読経が全て終わったら3回 -
真言宗
2回(1回目は優しく、2回目は少し強めに鳴らします。) -
浄土宗
読経時に8回(「八下(はちさげ)」といいます。) -
曹洞宗
3回(または内側を2回鳴らすお寺もあります。) -
臨済宗
3回 -
日蓮宗
朝に1回、夕方に2回 -
浄土真宗本願寺派(西)
勤行(読経)の始めに2回、中間に1回、最後に3回 -
浄土真宗真宗大谷派(東)
勤行(読経)の始めと中間に2回ずつ、最後に3回
浄土宗、浄土真宗(本願寺派・真宗大谷派)では、お参りのみの場合など読経時以外にリンは鳴らしません。
リンのお手入れ・メンテナンス方法
リンは使用しているうちに、お線香・ローソクのすすや空気中の水分により、汚れが付着したり、錆が発生することがあります。ここではリンを大切に使用していくためのお手入れ方法について解説します。
基本的なリンのお手入れ方法
リンは、毛バタキで埃を払い、柔らかい布で軽く拭きます。
変色や汚れが気になる場合は、専用の研磨剤やクリーナーを使用すると本来の輝きを取り戻せます。リンに研磨剤を塗り、柔らかい布で磨くように拭き上げましょう。着色やメッキ加工が施されたものなど、素材によっては使用できない場合もあるため、研磨剤の注意書きをよく確認してから使用することをおすすめします。
また、長く使用していると、緑青(ろくしょう)という青い錆が発生することがあります。研磨剤では錆を完全に除去することは難しいため、汚れが激しい場合はお買い替えもご検討ください。
錆は、素手で触ったり、水分が付いた状態で放置すると発生しやすくなりますので注意しましょう。
リンのお手入れ用品は仏壇・仏具店やインターネット通販などでご購入いただけます。
>>真鍮磨き(研磨剤)はこちら
>>お手入れ用クロスはこちら
>>その他お手入れ用品はこちら
リンの買い替え時期や処分方法に決まりはある?
リンのお買い替え時期は特に定められていないため、いつ実施しても問題ありません。不要になったリンは不燃ごみとして処分することが可能です。魂が宿る仏具ではないため、処分時に読経などは不要です。
そのままごみとして処分することに抵抗がある場合は、リンに少量の塩をかけてお清めをするか、仏壇・仏具店にお仏具の引き取りの依頼をする方法もあります。
はせがわでは不要になったお仏壇・お仏具のお引き取りを有料で承っております。詳しくはお近くの店舗へお問い合わせください。不用品の店舗への直接持ち込みはお控えください。
人気のおしゃれなデザインのリン
近年は、洋風のお仏壇やお部屋に似合うモダンデザインのリンが注目されています。ここでは、はせがわで人気のおしゃれなデザインのリンをご紹介します。
近年人気のモダンデザインりん
モダンデザインのリンで最も人気があるのは「たまゆらリン」です。
専用のリン棒でリンを打つと高い澄んだ音が響き、半円状の鐘がゆらゆら揺れます。(下記リンク先の商品ページで動画がご覧いただけます。)また、非常にコンパクトで置き場所を選びません。
他にも、おしゃれなインテリアのようなリンが続々と登場しています。
よくある質問
リンに関するよくある2つの質問に回答します。
Q1. 純金製のリンが相続税の節税になるのは本当ですか。
A. リンは、相続税の非課税財産(祭祀財産)です。ただし、純金製のリンは購入目的によっては課税対象とみなされる場合がありますので注意が必要です。
ご先祖様の供養のために日常的に使用するお仏壇・お仏具は相続税の非課税財産(祭祀財産)ですので、生前に購入されることで相続税の節約になります。しかし、換金性が高いもの・骨董的価値が高いものなど、投資目的の購入であると税務署に判断された場合は課税対象となる場合があります。詳しくは法律の専門家に相談されることをおすすめします。
Q2. ペット仏壇にはペット専用のリンが必要ですか。
A. 通常のリンを使用して構いませんが、最近はペット専用のリンも販売されています。
ペット仏壇・仏具に関して厳密な決まりはないため、通常のリンを使用して問題ありません。近年はペット用のリンなどペット供養の専用商品も数多く登場しています。