お焚き上げとは?なぜ行う?
お焚き上げは、古くから日本で行われてきた伝統的な宗教行事のひとつです。ここでは、お焚き上げの意味や代表的な行事、起源、目的について詳しく解説します。
お焚き上げの意味
◆お焚き上げとは
神仏に関わる物や、亡くなった方の遺品、不要になった愛用品など、大切にしてきた品物を手放す際に行う儀式のことです。祈祷や読経により品物を浄化・供養し、火で焚き上げます。
お焚き上げは神道と仏教で行われますが、儀式に対する解釈が異なります。
神道では、「火の神様の力をお借りして、思いや魂の宿った品を"天に還す"儀式」とされ、仏教では、「亡くなられた方との思い出の品を焚き上げ"故人様に返す"儀式」と考えられています。
代表的なお焚き上げ行事
お焚き上げは、主に神社やお寺で宗教行事として実施されています。ここではお焚き上げの一種である代表的な行事をご紹介します。
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どんど焼き
使い終えたお正月飾り(門松・しめ縄など)や古くなったお札・お守りを神社やお寺で燃やし、煙とともに歳神様をお見送りして一年の幸せをお祈りする伝統的な火祭りです。どんど焼きの火で焼いたお餅やお団子を食べると一年間健康で過ごせるといわれています。
毎年1月15日(小正月)頃に実施され、多くの場合無料で参加することができます。(お焚き上げする品物によっては料金が発生することもあります。) -
人形供養
大切にしていた人形やぬいぐるみを神社やお寺で供養し、お焚き上げする行事です。1年に1回など、定期的に「人形供養祭」としてお焚き上げをしている神社・お寺があります。
費用は、神社・お寺や人形のサイズなどによって異なりますが、人形1体当たり1,000円~5,000円程度が目安です。
お焚き上げの起源
古くから日本では、火を使った儀式が「浄化」の象徴とされてきました。お焚き上げは、平安時代に宮中で行われた神事や火祭りが起源とされています。
◆お焚き上げの起源とされる行事
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「庭燎(にわび・ていりょう)」
宮中で場を浄化するために焚かれていたかがり火。 -
「左義長(さぎちょう)」
小正月の宮中行事で、束ねた青竹に結んだ書物や扇子を焼いて国家安泰を祈った。 -
「大柴燈護摩供(だいさいとうごまく)」
天下泰平、五穀豊穣、家内安全などを願う護摩供養。「柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)」とも呼ばれる。
お焚き上げの目的
お焚き上げは様々な目的のために行われます。
ここでは代表的な5つの目的とお焚き上げに期待される効果について解説します。
1. ご神仏や霊魂に元の場所へ還っていただくため
神社で授かるお札・お守りや、お仏壇のお仏像・掛軸・お位牌は、神仏の依り代(よりしろ)となり魂が宿るとされています。そのため、ごみとして処分することは避け、神社やお寺にお焚き上げを依頼しましょう。お焚き上げすることで、物に宿ったご神仏や霊魂に元の場所へ還っていただくことができるとされています。
2. 故人様へ大切な品をお返しするため
お焚き上げは遺品整理の際に行われることもあります。納棺時に思い出の品を入れることと同義で、亡くなられた方が大切にされていた物をお焚き上げすることにより、その方へ品物や思いを届けることができるといわれています。
3. 物に宿る思いや魂を供養し、感謝を表すため
古くから日本では、「大切にしてきた物には思いや魂が宿る」と考えられてきました。そのため、愛用品、写真、人形・ぬいぐるみなど、ごみとして処分することに抵抗がある品物も少なくないでしょう。そのような物は、お焚き上げをすることで、物に込められた思いを浄化・供養し、物に対する感謝の気持ちを表してから手放すことができます。
4. 悪縁を切るため
良くない出来事が起きたとき、それに関連する品物をお焚き上げすることで悪い縁を断ち切り、浄化するという目的もあります。悪縁を断つことで、新たに良縁が結べるようになるともいわれています。
5. 革・毛皮製品をお焚き上げし、動物供養するため
動物の革・毛皮製品などをお焚き上げすることで、動物の痛みや苦しみを慰め、供養することができるといわれています。
お焚き上げの依頼先と費用
お焚き上げが可能な場所・依頼先は大きく分けて2つあります。
それぞれのメリット・デメリット、費用の相場を確認し、いつどのように依頼するか検討されることをおすすめします。
1. 神社・お寺などの宗教施設
◆メリット
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費用が抑えられる
お正月飾りなどを焚き上げる「どんど焼き」は、多くの場合無料で行われています。お焚き上げする品物によっては費用が発生することもありますが、業者の引き取りと比較した場合、安価なケースが多いです。また、お札やお守りも納札所に無料で返納できます。 -
品物を大切に扱ってくれる安心感がある
神職者の祈祷や住職の読経によって、品物を浄化・供養したあとにお焚き上げをするため、最後まで品物を大切に扱ってもらえる安心感があります。社寺にもよりますが、お立会いが可能な場合もあります。
◆デメリット
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お焚き上げの日時が予め指定されている場合が多い
年に1回など、受付期間が限られていることが多く、自分の希望するタイミングでお焚き上げが行なえない場合があります。 -
素材や品物によっては預かってもらえないケースがある
不燃物や大きすぎるものなど、環境問題の観点からお焚き上げを実施できない場合があります。
神社・お寺に依頼する場合の費用
神社・お寺や、地域によって異なります。また、供養の形式によっても金額が変化します。
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合同供養の場合
複数の依頼主から預かった品物を一緒にお焚き上げします。
費用相場:3,000円~10,000円程度 -
個別供養の場合
1人の依頼主の品物を個別にお焚き上げします。
※個別供養を実施していない神社・お寺もあります。
費用相場:20,000円~70,000円程度
金額が明示されている場合は指定の金額をお渡ししますが、明示されていない場合はお渡しする金額に決まりはありません。直接神職者や住職に目安の金額をお聞きしてみてもよいでしょう。
のし袋の書き方とマナー
お焚き上げの代金を入れる封筒の表書きについて、神社の場合は「玉串料(たまぐしりょう)」(または「初穂料(はつほりょう)」や「御焚上料」)、お寺の場合は「お布施」と記載します。封筒は白無地のものを使用し、水引は不要です。
紙幣は新札・旧札どちらでも構わないとされています。お礼としてお渡しするものですので、きれいな紙幣を選ぶとよいでしょう。
2. 専門業者(遺品整理、お焚き上げ専門業者など)
◆メリット
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受付期間に制限がなく、手間も少ない
基本的に一年中対応してもらうことが可能です。自宅で引き取りしてもらえるケースも多く、その場合外へ出向く必要がありません。 -
対応可能な品物の種類が多い
神社やお寺でお焚き上げを断られた物でも引き取ってもらえる場合があります。
◆デメリット
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費用が割高
神社やお寺に依頼する場合に比べ、費用が高くなる傾向があります。 -
信頼できる業者選びが難しい
不法投棄が問題になるケースもあるため、依頼前に信頼できる業者か確認することが必須です。
専門業者に依頼する場合の費用
部屋全体を片付けた場合の金額になりますが、下記の金額がおおよその相場といわれています。
- 1K:30,000円~
- 3LDKの一般的なファミリー向け住宅:100,000円~500,000円程度
信頼できる業者の選び方は?
不用品回収・遺品整理業者は数多く存在しますが、下記の点を注視し、信頼できる業者か判断することが重要です。
- 不用品処分に必要な「一般廃棄物収集運搬許可証」を持っている(または、許可を持った業者に委託している)
※必須ではありませんが、「遺品整理士」の資格があるとなお安心です。 - 訪問して明瞭な見積もりを提示してくれる
- 口コミの評判が良い
- 対応が丁寧で実績豊富
■遺品整理について詳しくはこちら
はせがわのピースフルライフサポートでは、遺品整理サービスを提供しております。不用品の回収だけでなく、査定経験豊富なバイヤーによる買取も行なっています。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
お焚き上げの依頼方法
お焚き上げの依頼から実施までの流れについて、一例をご紹介します。
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神社・お寺または業者にお焚き上げの依頼をする
どんど焼きや合同供養祭に持ち込む場合は、事前連絡が不要の場合もあります。 -
指定期間内にお焚き上げしてもらいたい品物を持参する。もしくは、自宅で引き取りをしてもらう。
宅配便などで指定の場所へ送る場合もあります。 -
お焚き上げの費用を支払う
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お焚き上げが実施される
直接参加できない場合は完了の通知が届くこともあります。
お焚き上げの対象となる物・できない物
品物や素材によっては、神社やお寺でのお焚き上げを引き受けていただけない場合があります。
ここでは、お焚き上げの対象となる品物と、お焚き上げができない品物の一例をご紹介します。
よくお焚き上げされる代表的な物
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神仏に関わる物
(神棚、お仏壇、お札、お守り、絵馬、破魔矢、お仏像、掛軸、お位牌など) -
季節の飾り物
(門松・しめ縄などの正月飾り、初盆用の白い盆提灯・盆花などの盆飾り、七夕飾りなど) -
人形、ぬいぐるみ
(雛人形、五月人形など) - 写真、遺影
- だるま
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その他、思いの込められた品など
(故人様が大切にしていた物、卒業アルバム、千羽鶴など)
原則的に、神事に関する物は神社、仏事に関する物はお寺でお焚き上げしていただきましょう。
■神棚の処分について詳しくはこちら
神棚処分の4つの方法や処分・交換のタイミング、費用相場などを具体的に解説します。
お仏壇のお焚き上げについて
お寺の考えによりますが、一般的にはお仏壇本体に魂は宿らないとされています。そのため、お仏壇に魂入れ(開眼供養)をした場合を除き、処分の際は必ずしも読経やお焚き上げをする必要はありません。近年は環境問題もあり、お仏壇のお焚き上げ自体が少なくなってきています。
はせがわでは不要になったお仏壇・仏具や神棚・神具の有料引き取りサービスを行っております。住職による読経後、環境に配慮した方法で処分しています。
詳しくはお近くの店舗へお問い合わせください。
※不要になった物品の店舗へのお持ち込みはご遠慮ください。
※お仏像・掛軸・お位牌については、お引き取り前に魂抜き(閉眼供養)の読経が必要です。魂抜きが済んでいない物はお預かりできかねますのでご注意ください。
■お仏壇の処分について詳しくはこちら
お仏壇処分の4つの方法や費用相場、3つの注意点について具体的に解説します。
お焚き上げができない物
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不燃物
(金属、精密機器、ガラス、陶器製品など) -
燃やすと有害物質が発生するおそれがあるもの
(プラスチック製品、ビニール製品など) - 危険物・引火性のある物
お焚き上げができない物は「お焚き上げができない場合はどうする?」を参考に、自治体のルールに従って処分しましょう。また、神社やお寺で引き取れない物でも、専門業者によっては引き取りが可能な場合もあります。
いつする?お焚き上げのタイミング
お焚き上げを行う具体的な時期やタイミングに厳密な決まりはありませんが、新年の始まりや引っ越し時、家族の誰かが亡くなった後など、人生の節目に行われることが多いです。
お焚き上げが必要になるタイミング
1. 神仏に関わる品物を処分する時
一年間お祀りしたお札や、願いが成就した後のお守り・絵馬、魂の宿っている礼拝品(お仏像・掛軸・お位牌)などを手放す時にお焚き上げを行います。
2. 故人様の遺品整理が必要になった時
時期に決まりはありませんが、四十九日法要や一周忌、三回忌など法要の節目に合わせて行われることが多いです。
3. 正月飾り・お盆飾りなど、季節の飾り物を処分する時
使い終わった季節の飾り物を処分する際にお焚き上げをします。お正月飾りは1月15日前後に行われるどんど焼きで焚き、お盆飾りは送り盆(お盆最終日)に送り火として焚く場合があります。ただし、地域差があるため詳しい人に確認しておくと安心です。
4. 生活環境が変化する時
引っ越しや施設への入居など生活環境の変化に伴い、お焚き上げが必要になる場合があります。処分品が大量にある場合は、自宅引き取りが可能な業者の利用もおすすめです。
5. その他、不要になった愛用品を手放す時など
通年お焚き上げを受け付けている神社・お寺もありますが、予め決められた日時に実施するケースが多いようです。詳しくは各神社・お寺に問い合わせるとよいでしょう。
お焚き上げができない場合はどうする?
近年は環境問題や周囲への影響を考慮し、神社やお寺でお焚き上げができないケースもあります。ここでは、お焚き上げの代わりの方法について解説します。自宅で費用を掛けずに実施することができます。
塩でお清めをして処分する
少量の場合、塩でお清めをして処分する方法がおすすめです。
半紙などの白い紙に供養したい品物を乗せ、少量の塩をかけてお清めをします。その後、紙で丁寧に包み、感謝の気持ちを込めて一般ごみとして処分します。
お札・お守りやお仏像・掛軸・お位牌など、神仏や魂が宿っているとされているものについては神社・お寺での祈祷や読経(魂抜き・閉眼供養)が終わってから処分しましょう。
自宅でお焚き上げをする
自宅の庭や敷地を使って、自分でお焚き上げをすることも可能です。
塩でお清めをした後、白い紙に包んだ状態で火を付けます。陶器の皿など耐火性のある物の上で焼却しましょう。
ただし、火事のリスクや周囲住宅への影響もありますので、実施可能かどうか火の取り扱いルールや環境を事前によく確認しましょう。
よくある質問
お焚き上げに関するよくある3つの質問にお答えします。
Q1. お守りを返納する場合、お守りを授かった神社・お寺でなければいけませんか。
A. お守りを授かった神社・お寺へ返納することが望ましいとされていますが、決まりではありません。
旅行先で購入したお守りを返納する場合や、引っ越しに伴いお守りを授かった神社・お寺が遠方になってしまった場合など、同じ場所へ返納することが困難な時は、別の神社・お寺へ返納しても問題ないとされています。可能であれば、同じ宗教や宗派の神社・お寺を選ぶとよいでしょう。
Q2. 葬儀で授かった白木のお位牌は、四十九日法要後どうしたらいいですか。
A. 多くの場合、四十九日法要で「本位牌」に魂を移し替え、不要となった白木位牌は住職にお焚き上げしていただきます。
白木位牌は漆塗りや唐木の「本位牌」ができるまでの仮のお位牌です。四十九日法要で本位牌に魂入れ(開眼供養)を行なった後は不要となるため、住職にお預かりいただき、お寺でお焚き上げします。(立ち会いの必要はありません。)
■お位牌の処分について詳しくはこちら
どのような場合にお位牌の処分をおこなうのか、処分のタイミングや閉眼供養について解説しています。
Q3. 昨年のお札をお焚き上げし忘れてしまった場合や、受付期間に間に合わなかった場合はどうしたらいいですか。
A. 神社やお寺の納札所に返納するか、通年お焚き上げをしている社寺に依頼しましょう。
納札所にお札を返納した後、感謝の気持ちを込めてお賽銭を納めるとより丁寧です。