家族が亡くなった際に受け取れる給付金とは?
家族が亡くなると、残された遺族は、国や自治体の公的な制度によって様々な給付金を受け取ることができます。ただし、故人様の死亡時の年齢や家族構成などによって受け取れる給付金は異なり、設けられた申請期間を過ぎると受け取れなくなってしまうものもあるため、まずは各給付金の基本を把握することが大切です。
まず初めに、一般的に遺族が受け取り可能な給付金を一覧形式でご紹介します。
受け取り可能な給付金一覧
一般的に、家族が亡くなった際に受け取ることができる主な給付金は以下の通りです。
※給付金名をクリックするとそれぞれの詳細説明に飛ぶことができます。
1.健康保険から支給されるお金
2.国や自治体の公的制度から支給されるお金
3.加入先の保険から支給されるお金
4.勤務先から支給されるお金
健康保険から支給されるお金
健康保険の制度により、葬儀費用に関する公的な補助金が支給されます。日本では、国民全員に対して公的な医療保険に加入する義務(国民皆保険制度)が定められているため、基本的には必ず受け取ることができると考えていいでしょう。
加入先によって制度の詳細は異なり、健康保険に加入していた場合は「埋葬料」、国民健康保険に加入していた場合には「葬祭費」として支給されます。どちらの場合も定められた期限内に申請が必要です。
1.葬祭費
「葬祭費」とは、国民健康保険(自営業など)に加入していた方が亡くなった場合に、葬儀(葬祭)を行った方に対して、故人様の居住地の自治体から支給される給付金のことです。また、後期高齢者医療制度に加入していた方が亡くなった場合にも、同様に「葬祭費」を受け取ることができます。
- 金額:3~7万円程度 ※自治体によって異なる
- 申請先:故人の居住地の市区町村役場
- 必要書類:葬祭費支給請求書、埋葬や葬儀を行ったことが確認できる書類(領収書の原本など)、故人の健康保険証、申請者の本人確認書類、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:葬儀を行ってから2年以内
2.埋葬料
「埋葬料」とは、健康保険(会社員等)に加入していた方が亡くなった場合に、故人様によって生計を維持され、埋葬を行う遺族に対して支給される給付金のことです。健康保険とはいわゆる社会保険のことを指し、全国健康保険協会が運営する健康保険(協会けんぽ)や共済組合などが該当します。
- 金額:一律5万円 ※組合によっては独自の付加給付もあり
- 申請先:加入先の保険組合
- 必要書類:埋葬料支給申請書、被保険者が亡くなったことを証明する書類、故人の健康保険証、申請者の本人確認書類、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:亡くなった翌日から2年以内
国や自治体の公的制度から支給されるお金
国民年金や厚生年金などの公的制度からも、様々な給付金や手当を受けることができます。
代表的な制度として、支給されていない年金(未支給年金)を請求することができる制度、年金加入者の遺族に支給される「遺族年金」「死亡一時金」「寡婦年金」制度、ひとり親になった場合に支給される「児童扶養手当」制度、自己負担額以上の高額な医療費を負担した際に超過分を請求できる「高額療養費制度」を以下にそれぞれ紹介します。
1.未支給年金の請求
年金を受給している方が亡くなった場合には、年金受給者と生計を同じくしていた3親等以内の親族が、支給されていない年金を「未支給年金」として請求をすることができます。これは、年金が2か月に1回のタイミングの後払い形式(例:2~3月の2か月分を4月に支給)であることが理由のため、亡くなったタイミングを問わず必ず発生するものです。
- 金額:元々の受給額によって異なる
- 申請先:年金事務所または街角の年金相談センター
- 必要書類::未支給年金請求書、年金証書、故人との関係が分かる書類、故人と生計を同じくしていたことが分かる書類、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:亡くなってから5年以内
未支給年金の受給要件について詳しくはこちら>>
※外部サイト(日本年金機構)に移動します。
未支給年金の申請期限は亡くなってから5年以内と長めですが、あまり後回しにせず、「年金の受給停止」手続きと同じタイミングで行ってしまうと安心です。
年金受給者が亡くなったら必ず必要な「年金受給停止の手続き」とは
年金受給者だった方が亡くなった場合は、10日または14日以内に受給停止手続きが必要です。※ただし、日本年金機構にマイナンバーを収録済みであれば手続きは原則不要となります。
この停止手続きを怠ってしまうと、受け取り過ぎた年金を返還する必要があるほか、不正受給と見なされる場合もありますので気を付けましょう。
- 手続き先:年金事務所または街角の年金相談センター
- 必要書類:年金受給権者死亡届(報告書)、年金証書、死亡の事実を明らかにできる書類(死亡診断書コピーや、死亡の記載がある戸籍など)
- 申請期限:厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は死亡後14日以内
2.遺族年金
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している方が亡くなり、一定の要件に当てはまる場合に、故人様によって生計を維持されていた遺族に対して支給されるものです。これは、家計を支えていた方が亡くなった場合に、遺された家族が生活に困らないようにするための制度です。
遺族年金は、大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類がありますので、以下にご紹介いたします。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた方がなくなり、一定の受給要件を満たしている場合に、故人様によって生計を維持されていた18歳以下の子がいる配偶者、または18歳以下の子(親がいない場合)が受け取ることができる年金です。
亡くなった日の翌月から、子が18歳になる年度の3月末までの期間中に受け取りが可能です。
また、もし上記の要件を満たしておらず遺族基礎年金をもらえない場合でも、別途「死亡一時金」もしくは「寡婦年金」のどちらかを受け取れる場合があります。
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金額:
・子のある配偶者が受け取る場合…【年額795,000円+子の数に応じた加算額】
・子が受け取る場合…【年額795,000円+2人目以降の子の数に応じた加算額】
※上記の年金額は、令和5年4月分から適用。配偶者が67歳以下である場合のケース。
※1人目および2人目の子の加算額は各228,700円、3人目以降の子の加算額は各76,200円 - 申請先:故人の居住地の市区町村役場、または年金事務所か街角の年金相談センター
- 必要書類:年金請求書、故人の年金番号を明らかにする書類(故人の年金手帳)、故人との関係が分かる書類、故人と生計を同じくしていたことが分かる書類、請求者と子の収入が確認できる書類、死亡の事実を明らかにできる書類、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:亡くなった日の翌日から5年(過去にさかのぼって請求できる期限)
遺族基礎年金の受給要件について詳しくはこちら>>
※外部サイト(日本年金機構)に移動します。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、故人様によって生計を維持されていた遺族に対して支給される年金です。亡くなった日の翌月から、支給対象者の条件に応じた期限まで受け取ることができます。
また、厚生年金の加入者は国民年金にも加入しているため、遺族厚生年金の対象者であり子もいる場合には、遺族基礎年金もあわせて受け取れる可能性があります。
- 金額:故人様の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
- 申請先:年金事務所または街角の年金相談センター
- 必要書類:年金請求書、故人の年金番号を明らかにする書類(故人の年金手帳)、故人との関係が分かる書類、故人と生計を同じくしていたことが分かる書類、請求者と子の収入が確認できる書類、死亡の事実を明らかにできる書類、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:亡くなった日の翌日から5年(過去にさかのぼって請求できる期限)
遺族厚生年金の受給要件について詳しくはこちら>>
※外部サイト(日本年金機構)に移動します。
3.死亡一時金
死亡一時金とは、亡くなった月の前月において、国民年金の第1号被保険者として保険料を36月以上納めていた方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった場合、故人様と生計を同じくしていた遺族に支給されるものです。支給には優先順位があり、【配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹】の順で最も優先順位が高い方が受給可能な制度です。
- 金額:保険料を納めた月数に応じて12万円~32万円
- 申請先:故人の居住地の市区町村役場、年金事務所、街角の年金相談センターのいずれか
- 必要書類:国民年金死亡一時金請求書、故人の年金番号を明らかにする書類(故人の年金手帳)、故人と申請者の関係が分かる書類(戸籍謄本など)、世帯全員の住民票の写し、故人の住民票(除票)、申請者の世帯全員の住民票、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:亡くなった翌日から2年以内
死亡一時金の受給要件について詳しくはこちら>>
※外部サイト(日本年金機構)に移動します。
4.寡婦年金(かふねんきん)
寡婦年金(かふねんきん)とは、国民年金の第1号被保険者(自営業等)として10年以上保険料を納めた夫が年金を受け取らず亡くなった場合に、10年以上継続して婚姻関係があり、その夫によって生計を維持されていた妻に対して支給される年金のことです。妻が60歳から65歳になるまでの5年間受給可能です。
受給対象は、遺族年金が受給できず、かつ死亡一時金を受給しない妻に限られます。
- 金額:夫が本来受給する予定だった老齢基礎年金の4分の3の額
- 申請先:故人の居住地の市区町村役場、年金事務所、年金相談センターのいずれか
- 必要書類:年金請求書、故人の年金番号を明らかにする書類(故人の年金手帳)、故人と申請者の関係が分かる書類(戸籍謄本など)、世帯全員の住民票の写し、故人の住民票(除票)、申請者の世帯全員の住民票、受け取り金融機関の通帳など
- 申請期限:夫の死亡後5年以内
寡婦年金の受給要件について詳しくはこちら>>
※外部サイト(日本年金機構)に移動します。
5.児童扶養手当(じどうふようてあて)
児童扶養手当(じどうふようてあて)とは、親のどちらかが亡くなってひとり親家庭になった場合に、生活の安定・自立支援を目的として、親または養育者に対して支給される手当のことです。支給期間は、子が満18歳に達してから最初の年度末(3月31日)までとなります。
もし公的年金(遺族年金や老齢年金)を受け取れる場合は支給対象外ですが、児童扶養手当より公的年金の額が低い場合は、その差額を児童扶養手当として受けることができます。
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金額:対象になる子の人数と所得制限によって異なる
※受給者と、受給者と生計を共にする扶養家族の所得によって所得制限があり、「全額支給」「一部支給」「支給対象外」のいずれかが決まります。 - 申請先:居住地の市区町村役場
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必要書類:児童扶養手当認定請求書、故人・申請者・対象児童の関係が分かる書類(戸籍謄本など)、申請者と対象児童の個人番号(マイナンバー)が分かる書類、本人確認書類、受け取り金融機関の通帳など
※市区町村によって異なる場合があります。 - 申請期限:なし <※記載が見つからず。もしあるようなら追記いただきたいです>
6.高額療養費の請求
1か月の医療費負担が自己負担限度額を超えて支払った場合に、医療費の家計負担が重くならないよう、その超過分が払い戻しとなる制度を「高額療養費制度」と呼びます。本人の生存中から使用できる制度ですが、本人が亡くなった後でも遺族の方(相続人)が請求することができます。
払い戻しされた医療費は相続財産に含まれるため、遺産分割協議の対象になります。後々のトラブルの原因となりますので、少額であっても必ず相続財産として取り扱うようにしましょう。
- 金額:負担した医療費によって異なる
- 申請先:故人の居住地の市役所役場、健康保険組合など
- 必要書類:高額療養費支給申請書、医療費の明細書、故人との関係が分かる戸籍謄本など
- 申請期限:診察を受けた月の翌月の初日から2年以内
加入先の保険から支給されるお金
もし任意で加入している民間保険があれば、「死亡保険金」を受け取れる場合があります。加入先によって金額や手続き方法は異なりますので、詳細は直接ご確認いただくと安心です。
1.死亡保険金
死亡保険金(しぼうほけんきん)とは、民間保険会社の生命保険に加入していた方(被保険者)が亡くなった場合に、受取人に対して支給されるお金のことです。
被保険者・保険料の負担者・保険金受取人が誰であるかによって、所得税・相続税・贈与税のいずれかが課税される仕組みになっています。
必要書類や手続きの流れ、受け取り額等は加入先によって異なりますが、まずは受取人に指定された方が加入先にご連絡を入れ、案内に沿って手続きを進めていただく流れが基本です。
勤務先から支給されるお金
会社の制度によっても異なりますが、故人様が会社勤務であった場合には、遺族に対して「弔慰金」や「死亡退職金」が支給されることがあります。
1.弔慰金(ちょういきん)
「弔慰金(ちょういきん)」とは、福利厚生の一環として慶弔金制度(けいちょうきん)が設けられている場合に、在職中に亡くなった方の遺族に対して支給されるお見舞い金のことです。 業務中に亡くなった場合や、勤続年数が長いかどうか等によって算出方法を分けているケースもあるため、弔慰金の相場は会社によって大きく異なります。
手続きの必要書類なども会社によって異なりますので、まずは慶弔金制度があるかどうかを勤め先に確認してみるとよいでしょう。
弔慰金は原則非課税ですが、受取額が高額になる場合には、相続税法において定められた限度額の超過分が課税対象となる場合もあります。不明な点があれば、税理士などの専門家にご相談ください。
2.死亡退職金
「死亡退職金」とは、制度の一環として退職金制度が設けられていた場合に、在職中に亡くなられた方が本来受け取るはずだった退職金を、遺族に対して支給するお金のことです。
死亡退職金を相続人が受け取る場合には非課税枠が設けられており、「500万円×法定相続人の人数」を超えなければ非課税として取り扱われます。弔慰金と同様に、計算に不明点があれば税理士にご相談いただくと良いでしょう。
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この記事を監修した人
司法書士・行政書士法人オーシャン
横浜・渋谷・藤沢エリアを中心に、年間2,000件超の相続業務を担当する国内屈指の相続専門事務所。また、グループ内の株式会社では、相続遺言関連業務に特化した国内最大級の士業向け勉強会(相続遺言実務家研究会)を運営し、全国の士業に対する業務レクチャーも担当。
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