花立とは?お仏壇に飾る意味
花立とはどのような仏具で、なぜ必要なのか、基本情報を解説します。
花立とはどんな仏具?
花立とは、お仏壇などに花を供えるために花瓶の役割をする仏具です。
花立は、お線香をお供えする「香炉」、灯明(ろうそくの火)をお供えする「火立(ろうそく立て)」と合わせて「仏の三大供養」と呼ばれ、お仏壇に欠かせない仏具の一つです。
用途別・花立の種類
花立には用途別で複数の種類があります。代表的なものをご紹介します。
お仏壇用の花立
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生花の花立
お仏壇の内部に生花をお供えするための花立です。一般的に用いられる花瓶と比べ、お仏壇の中に入る小ぶりな大きさのものがほとんどです。
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華瓶(けびょう)
ご本尊の手前に「樒(しきみ)」の葉を一対でお供えするための仏具です。浄土真宗で用いられます。
本願寺派(西)では宣徳色(こげ茶に近い色味)もしくは色付き(黒色など)のものを使用し、真宗大谷派(東)では金色のものを使用します。■樒について詳しくはこちら
樒は邪気払いやお清めのために使われてきました。このページでは樒の基本情報と仏教・各宗派との関わり、榊(さかき)との違い、使用例について解説しています。
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常花の花立
お仏壇の内部に「常花(じょうか)」を飾るための花立です。
※常花…蓮の花を模したお飾りです。蓮が泥の中から生まれながらも泥にけがされず清らかに咲く姿を、人間が迷いの世界に住みながらもよりよく生きる姿に例えています。浄土真宗では用いません。
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お仏壇の周囲に飾る花瓶
お墓用の花立
花立はお墓でも用いられます。お仏壇の花立とは形状が異なり、素材はステンレスやプラスチックが主流です。
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墓石取付型の花立
墓石の穴に差し込む「落とし込み式」と、墓石の上に取り付ける「ネジ式」があります。 -
野花立
お墓の周囲の地面に挿して使用します。
お仏壇に花立を供える理由
ここではお仏壇に生花の花立をお供えする具体的な理由を解説します。
「仏様の慈愛と忍耐」を象徴している
蕾から花が開き、やがて散っていく姿を人間の一生になぞらえ、命の儚さと尊さ、「諸行無常※」の教えを仏様が示してくださることから、お仏壇の花は「仏様の慈愛(慈悲)」を表しているとされています。
※諸行無常…全ての物事は変化し続けており、変わらないものはないという教え
また、寒い冬を耐え抜き美しく咲く花は、怒りや苦難に心を乱されることなく「忍耐」することの大切さを私たちに教えてくれると考えられています。
故人様や仏様への感謝の気持ちを表す
故人様が好きだった花をお供えして在りし日を偲ぶことで、花を通じて故人様へ感謝の気持ちを表すことができます。
また、仏様は香りをご馳走として召し上がるといわれており(「香喰(こうじき)」)、お線香の香りとともに花の香りを楽しんでいただくため、花をお供えするという考え方もあります。
お供えする人の心を豊かにする
お供えは、仏様や故人様のためになるだけではなく、お供えする人自身の心も豊かにしてくれます。きれいに咲いた花を大切にお供えし、故人様へ思いを馳せる時間は、穏やかで優しい心を育んでくれます。
もともと「供養」という言葉は「供給資養(くきゅうしよう)」を略したものです。「供給(お供えをすること)」「資養(資質・心を養う)」=「お供えをする行為は自分自身の心を養い豊かにする行為である」という意味を持ち合わせています。
花立選びの4つのポイント
お仏壇の花立を選ぶポイントは大きく分けて4つあります。
- サイズ
- 素材
- 形状・デザイン
- 色
それぞれ詳しく解説します。
【サイズ】お仏壇の大きさに合わせて選ぶ
花立は、お供えする花の高さも考慮し、お仏壇の大きさに合わせたサイズを選びましょう。上置き型のお仏壇は小さめのサイズ、床置き型のお仏壇は中くらいから大きめのサイズがおすすめです。
◆お仏壇別 花立のサイズの目安
- 上置き型…2.5~3.0寸程度(約7.5~9cm)
- 床置き型…3.5~4.0寸程度(約10.5cm~12cm)
※花立の寸尺表記は高さを表しています。
【素材】それぞれにメリット・デメリットがある
様々な素材の花立が存在しますが、お仏壇の花立に主に使用されている素材は真鍮(しんちゅう)と陶器です。それぞれのメリット・デメリットを把握した上で選択することをおすすめします。
真鍮
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メリット…重みがあるため花をお供えした時にぐらつかず、飾りやすい。転倒しづらい。
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デメリット…長期間使用することで青サビが発生することがある。
陶器
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メリット…サビが発生せず、お手入れがしやすい。金属製に比べると安価な商品が多い。
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デメリット…衝撃に弱く、欠けたり割れたりすることがある。
その他
他にも、ステンレス、銅、アルミ、ガラス、プラスチック、木などの素材で作られた花立もあります。金属製の花立はサビ、その他素材は耐久性に留意して使用されるとよいでしょう。
【形状・デザイン】仏具一式を新調される場合は「仏具セット」がおすすめ
「仏具セット(具足)」は、宗派に適した仏具や必要な仏具を統一感のあるデザインで揃えることができます。お仏壇や仏具一式を新調される方におすすめです。
近年は昔ながらの伝統型仏具だけでなく、リビングなど洋室にも似合うおしゃれなモダンデザイン仏具も多数ラインナップしています。菩提寺から指定などがない場合はお好みのデザインをお選びいただいて問題ありません。
◆仏具セットの種類
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三具足(みつぐそく)
「花立」「香炉」「火立」の三点セットです。お仏壇のお参りに欠かせない最も重要な仏具が揃っています。 -
五具足(ごぐそく)
三具足の「花立」と「火立」をそれぞれ一対にした合計五点の仏具セットです。
他にも、三具足に「仏飯器(ご飯の器)」「湯呑」「線香差」を加えた六具足などもあります。(セットの種類により、仏具の内容が異なる場合もあります。)
仏具セットの値段の相場は、素材や仏具の数にもよりますが、約10,000円~70,000円程度です。
伝統型の仏具セット
モダンデザインの仏具セット
お買い替えの場合は単品商品が便利
花立のみお買い替えの場合など、お求めやすい単品商品もお取り扱いしております。値段の相場は約700円~10,000円程度です。
葬儀から四十九日法要までは、祭壇に白い陶器製の花立・花瓶を用いることがありますが、法要後に真鍮製などの仏具に買い替えることが一般的です。
【色】浄土真宗は仏具の色に決まりがある
浄土真宗は、花立の色に決まりがあります。
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本願寺派(西)
宣徳色(せんとくしょく)または、黒など色付の花立を使用します。
※宣徳色…中国・明の宣徳時代に作られた銅器に多く見られる色調で、茶・こげ茶に近い色合いです。 -
真宗大谷派(東)
金色の花立を使用します。
近年は、モダン仏壇やコンパクト仏壇の登場により、仏具のデザインも多種多様になりましたが、原則的には宗派の決まりに則ったお飾りをします。浄土真宗でモダンデザインの仏具を使用したい場合などは、菩提寺へ事前に相談されることをおすすめします。
その他宗派に関しては特に決まりはないため、お好きな色をお選びいただいて問題ありません。
花立はどこで買う?
花立や花瓶は、仏壇・仏具店、ホームセンター、100円均一ショップなどの店舗で購入することができます。
また、お手軽なインターネット通販のご利用も便利です。
仏具セットや宗派に適した花立のご購入は、仏壇・仏具店のご利用がおすすめです。豊富な種類からご要望に適した商品のご提案が可能です。
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花立の供え方に決まりはある?
花立の供え方に絶対的な決まりはありませんが、花の本数や避けたほうがよい花の種類など、知っておきたいマナーがあります。ここでは、一般的な花立の供え方や花の選び方について詳しく解説します。
花立の個数
花立を2つ(左右一対)飾る形がより丁寧ですが、コンパクトなお仏壇の場合は1つでも問題ありません。お仏壇の大きさに合わせて仏具を選びましょう。
お寺や地域によっては、法事などの特別な日には花立や火立を一対で使用するように勧められるケースもありますので、心配な方は事前に菩提寺の住職へ確認されると安心です。
花立をお仏壇に置く位置
花立は、お仏壇最下段の薄引き出し(膳引き)の上に置きます。
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三具足の場合
香炉を中心に置き、向かって右側に火立、左側に花立を配置します。 -
五具足の場合
香炉を中心に置き、花立と火立てはそれぞれ左右一対に配置します。
また、お仏壇に花立の水分が付着するのを防ぐため、お仏壇マットの使用をおすすめします。
■お仏具の飾り方について詳しくはこちら
宗派やお仏壇の大きさに合わせた仏具の飾り方について、詳しく図解しています。
お供えする花の本数
絶対的な決まりではありませんが、1つの花立につき、3本、5本、7本などの奇数がよいといわれています。割り切れない数字は「縁が切れない」ことを連想させるため、故人様との繋がりを大切にする意味合いがあるとされています。
花の供え方
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花立の大きさに合わせて、茎を水切りする。
茎を水に浸けた状態で、ハサミで手早く斜めに切ります。これにより乾燥や切り口に気泡が入ることを防ぎ、切り花を長持ちさせることができるといわれています。 -
花立に水を入れ、花を供える
花立に1/3程度を目安に水を入れ、カットした花をお供えします。お仏壇は水に弱いため、花立の水が落ちないよう気を付けましょう。葉が水に浸かると水が汚れやすくなるため、水に浸かる部分の葉を取り除いてお供えすることがおすすめです。
花は参拝者に向けてお供えします。仏様の慈愛を私たちに向けるという意味合いがあります。
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定期的に花を取り替える
花は毎日新しいものに交換する必要はありませんが、水はこまめに取り替えましょう。水が汚れると花が傷みやすくなります。
どんな花をお供えしたらいい?
仏花の選び方に決まりはありませんが、一般的にお供えに適している花・適さないとされる花があります。具体的な種類をご紹介します。
お供えにおすすめの花
お仏壇のお供えに定番の花をご紹介します。
- 仏花として代表的な花…ユリ、菊、胡蝶蘭など
- 日持ちしやすい花…かすみ草、カーネーション、トルコキキョウなど
- 四季折々の花…マーガレット、スターチスなど
- 故人様の好きだった花
◆はせがわ 仏花の定期便
はせがわでは、お忙しい方やお花選びでお困りの方におすすめの「はせがわ 仏花の定期便」を提供しております。
お花のプロがコーディネートした新鮮な生花を定期的にお届けします。(週1回、隔週、月1回コースからお選びいただけます。)
お供えに適さないとされる花
下記に当てはまる花は仏花に適さないといわれています。ただし、お供えには適さないものの、故人様が好きだった花などをお供えしたい場合は、柔軟に対応されるとよいでしょう。
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良くない意味を連想させる花…椿、むくげなど
花が落ちる、日持ちがしないなどの特徴が「死」を連想させるといわれています。 -
毒性を持つ花…彼岸花、アジサイ、スイセン、スズラン、チューリップなど
「毒を盛る」と捉えられることから、お供えには不向きです。 -
香りの強い花…カサブランカ、オミナエシ、金木犀など
強すぎる香りはお線香の香りの妨げになってしまいます。 -
トゲがある花…バラ、アザミなど
トゲが殺生を連想させます。トゲを除去してお飾りすることは可能です。
また、花粉が多い花は花粉を取り除いてからお供えすることをおすすめします。
花の色に決まりはある?
日常的なお参り時にお供えする花の色に決まりはありませんが、白色、黄色、赤色、ピンク色、紫色、青色の花などがよく用いられます。
お通夜から四十九日法要までは白色を基調とした組み合わせにし、ご命日、一周忌や三回忌は白色中心の淡い色の組み合わせにすることが多いです。
造花をお供えしてもいいの?
お仏壇には造花をお供えしても問題ありません。花が傷みやすい夏場や、こまめに交換できない時には造花が便利です。
また、生花に特殊な保存加工を施して長期間お供えできるようにした「プリザーブドフラワー」も人気が高まっています。
ただし、生花以外のお供えをよく思われないお寺もありますので、菩提寺がある場合は事前に確認されると安心です。また、法事では生花をお供えするのが無難です。
■仏花について詳しくはこちら
お供えに適した花・タブーとされる花の種類や飾り方について解説し、あわせて造花・プリザーブドフラワーのお供え物をご紹介します。
よくある質問
花立に関するよくある2つの質問にお答えします。
Q1. 地震に備えて、花立が転倒しづらくなる方法はありますか?
A. 市販されている滑り止めマットの使用や、真鍮などの重みがある丈夫な素材の花立を使用することをおすすめします。
転倒を完全に防ぐことは困難ですが、好きな大きさにカットできる滑り止めマットを花立など仏具の下に敷くことで、転倒しづらくすることは可能です。また、倒れても破損しづらい丈夫な素材(真鍮・金属製など)の花立を使用されることをおすすめします。
Q2. 花立のお手入れ・掃除方法を教えてください。
A. 内部を水ですすいで表面の水分を拭き取ります。内部の汚れが気になる場合は、柄付きのブラシやスポンジで優しく洗浄しましょう。
研磨剤や薬剤の使用は変色や劣化の原因になることもあるため、使用できる素材か事前に必ず確認しましょう。表面に塗装や加工がある場合は避けるのが無難です。