終活に欠かせない「相続」の準備
「終活」とは、人生の終わりについて考え、備える活動のことです。自分の死後について検討するだけでなく、残りの人生をどう生きるか前向きに考えるための活動でもあります。
終活でやっておくべきことのひとつに、「相続」の準備があげられます。
そもそも「相続」とは何か、対象となる財産や関係する人など、基本的な知識について解説いたします。
相続とは?
「相続」とは、ある人が亡くなった時、その人が保有していた全ての財産・権利・義務(遺産)を、亡くなった人の関係者が受け継ぐことです。
亡くなった人を「被相続人」
財産・権利・義務を受け継ぐ人を「相続人」とも呼びます。
生前にしておきたい相続準備4選
相続に関して生前に準備しておきたいことを4つにまとめました。
- 保有財産の確認とリスト化
- 戸籍謄本(こせきとうほん)の準備
- 遺言書の作成
- 相続税の節税対策
相続の対象となる全保有財産を一覧にした「財産目録」を作成し、相続が必要な資産と処分する資産を検討します。「相続の対象となる財産一覧」で詳しく解説しています。
相続手続きの際には、自身の「出生から死亡までの戸籍謄本」が必要となります。そのため、生前に「出生から現在までの戸籍謄本」を収集しておくことで、残された家族に負担をかけずにすみます。「相続に必要な書類『戸籍謄本』」で詳しく解説しています。
相続が必要な財産については、誰に・何を・どのくらいの割合で相続させるか、書面に記して残します。「遺言書の重要性と注意点」で詳しく解説しています。
遺産には、金額や評価額に応じて相続税が課されます。残された家族の負担を軽減するため、節税対策をしておきましょう。「相続税の節税対策4選」で詳しく解説しています。
相続の対象となる財産一覧
相続の対象となるのは「全ての資産、権利、義務」です。注意点は、現預金、不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借入金、未払金といった「マイナスの財産」も含まれるということです。
具体的な相続財産の例
◆相続の対象となるもの
【プラスの財産】
- 現金、預貯金、株式等の有価証券
- 動産(車・貴金属・骨董品など)
- 不動産(土地・建物・駐車場など)
- 貸借権、特許権、著作権などの権利
【マイナスの財産】
- 借入金(ローン)などの債務
- 未払税金、未払費用、クレジットカードの利用残高など
◆相続の対象にはならないもの
- 他の人へ譲渡できない権利や義務
(親権、国家資格、生活保護受給権、扶養義務など) - 香典、弔慰金、葬儀費用
- 生命保険金(本人が保険金の受取人になっているものを除く)
- 死亡退職金(受取人指定がなく、本人に受け取る権利があるものを除く)
- 遺族年金(本人が保険金の受取人になっているものを除く)
- 墓地、墓石、お仏壇などの祭祀財産
生命保険金や死亡退職金については、遺産分割の対象にはなりませんが「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。
現在保有している財産と金額をリスト化した「財産目録」を作成すると、遺言書の作成など今後の作業がスムーズになります。不動産や金融商品など時期によって価値が変動する資産は、評価額を算出し、日付と基準を記載します。
財産目録には決まった形式はありませんので、裁判所が公開しているテンプレートなどを活用すると便利です。
※外部リンク
「家庭裁判所で使う書式 | 裁判所」
※外部リンク
「裁判所」財産目録(XLSX:21KB)
※外部リンク
「裁判所」財産目録記載例(XLSX:25KB)
不動産相続の注意点
不動産を相続した場合、法改正により2024年4月から「相続登記」が義務化されます。「相続登記」とは、土地や建物などの不動産を相続した際、相続人への名義変更の手続きを行うことです。不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請が必要で、正当な理由なく未登記の場合は罰金が科されます。
築年数が長く資産価値が低い建物や、郊外にあり、土地の活用や売却がしづらい不動産は、相続人にとって負担になってしまう可能性があります。自身の生前に売却するか、死後相続させるか、よく話し合っておくとよいでしょう。
不動産の管理・売却がしやすいように、土地の境界線を明確にしておくことも重要です。また、住宅にローンが残っている場合には住宅と一緒にローンも相続することになるため注意しましょう。
誰に遺産相続できる?
遺産を相続できるのは、民法で定められている法定相続人です。ただし、遺言書が残されている場合、その限りではありません。遺産を誰に相続させることができるか、相続人の範囲・条件について具体的に解説します。
遺産の相続権を持つ「法定相続人」と「受遺者」
財産を相続できるのは、「法定相続人」と「受遺者」です。
-
法定相続人
民法で定められた相続人のこと。被相続人の配偶者、子ども、父母、兄弟姉妹など、近しい親族が該当する。 -
受遺者(じゅいしゃ)
遺言書によって指定された、遺産の受取人のこと。
まず、法定相続人について解説します。
配偶者は必ず相続人となります。次いで、相続順位の高い方が法定相続人として遺産を受け取る権利があります。
- 第1順位「子」(直系卑属)※子が死亡している場合、孫やひ孫
- 第2順位「親(父母)」(直系尊属)※親が両方死亡している場合、祖父母
- 第3順位「兄弟姉妹」※兄弟姉妹が死亡している場合、甥や姪
順位の高い方が存在しない場合(子どもがいない夫婦など)は、次の順位の方に相続権が移ります。
例えば、被相続人に子がおらず、父母が健在の場合、配偶者と父母が相続人となります。配偶者がいない場合は、父母のみが相続人となります。
相続人となるはずだった方が既に死亡しており、その方に代わって孫、甥・姪などが相続人としての権利を持つことを「代襲相続(だいしゅうそうぞく) 」といいます。
第1順位の子が亡くなっている場合は孫・ひ孫、第3順位の兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪が「代襲相続人」となります。
甥や姪が死亡している場合、甥や姪の子は代襲相続ができません。
- 内縁関係の方は法定相続人に含まれません。
- 養子縁組をしている場合は、実子と同じ扱いになります。
- 相続人が未成年者の場合は「代理人」が必要です。(親権者など)
- 遺言書がない場合、財産を受け取ることができるのは法定相続人のみです。
法定相続人以外に財産を残したい場合、必ず遺言書を残しましょう。
相続に必要な書類「戸籍謄本」
法定相続人を明確にするため、相続には自身が生まれてから亡くなるまでの「戸籍謄本(こせきとうほん)」が必要です。本籍地のある市区町村役場で取得できます。
引っ越しなどで本籍地が変更になった場合は、変更した分全ての戸籍謄本が必要です。
必要に応じて、結婚などにより戸籍に誰もいなくなったことを証明する「除籍謄本」、現在の戸籍謄本の前の形式である「改製原戸籍」も収集します。
相続の方法と遺産の分割割合
相続の方法は、遺言書の有無によって異なります。遺言書が残されている場合のほうがスムーズに遺産を分けることができ、トラブルになりにくいといわれています。ここでは、相続(遺産分割)の3つの方法について詳しく解説します。
相続の方法
相続の方法は、大きく分けて3つに分かれます。
- 遺言書による相続
- 法定相続
- 分割協議による相続
1. 遺言書による相続
遺言書が残されている場合は、原則遺言書に記載されている内容に基づき、相続を行います。
遺言書を作成しておくことで、自身の希望通りに財産を渡せる可能性が高まります。また、親族内での相続争いが起きにくくなります。各財産の名義変更についても指定通りに行えばよいので負担が少なく済みます。自身にとっても家族にとっても、メリットが大きいといえるでしょう。
ただし、相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割も可能です。
自筆証書遺言(法務局保管を除く)、秘密証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要になります。遺言書を発見したら開封せずに家庭裁判所に持参し、「検認済証明書」を受け取ります。詳しくは「遺言書の種類」で解説しています。
2. 法定相続
法定相続は、民法で定められた割合で遺産を分ける方法です。
遺言書が残されていない場合、または、遺言書に記載のない財産を分ける方法のひとつです。
◆相続割合の一例(法定相続分)
-
配偶者と子の場合
2分の1ずつ
※子が複数いる場合は2分の1を子の人数で等分
-
子2人のみの場合
2分の1ずつ
※子の人数で等分 子が亡くなっている場合、孫が法定相続人となる
-
配偶者と被相続人の親の場合
配偶者3分の2 親3分の1
※親が2人とも健在なら、3分の1をさらに2分の1にする
-
配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合
配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
※兄弟姉妹が複数いる場合は4分の1を人数で等分する
上記の法定相続分はあくまで目安です。遺産分割協議で、相続人全員の同意があればどのように分けても問題はありません。
3. 遺産分割協議による相続
遺産分割協議とは、相続人全員の話し合いと合意のもと、誰が・何を・どのくらい相続するか、分配を決める方法です。必ず相続人全員で行う必要があり、1人でも欠けていると無効になります。(未成年の場合は代理人が必要です。)
後でトラブルにならないよう、協議の結果は書類に残します。(「遺産分割協議書」といいます。)
また、全員の同意に至らない場合は、裁判(遺産分割調停)になるケースもあります。
財産の名義変更には相続人全員の印鑑登録証明書が必要なため、手間や時間がかかります。
相続に必要な手続きと流れ
相続に必要な手続きと期限、手順につきましては、下記ページで詳しく解説しています。
■相続の流れについて詳しくはこちら
遺産相続に必要な手続き・段取りと、手続きの期限について詳しく解説しています。
遺言書の重要性と注意点
相続ではたびたび、相続争いや家族間トラブル・揉め事が問題になっています。
財産の大小に関わらず、約10件に1件程度が裁判(遺産分割調停や審判)になっているといわれています。
相続争いを防ぐためにも、終活における遺言書の作成は非常に重要です。ここでは、遺言書の必要性、遺言書の3つの種類とそれぞれのメリット・デメリット、注意点を解説します。
遺言書はなぜ必要?
遺言(ゆいごん・いごん)とは、「財産を・誰に・どのくらい残すか」という自分の意思を示すことです。それを書面にしたものが「遺言書」です。
遺言は「要式行為」といい、法律で規定された方式を守って書面にしなければ法的効力が生じません。そのため、口頭での意思表示だけではなく、遺言書を作成し、書面として残すことが重要です。
◆遺言書が必要な理由
- 相続争いなど、残された家族のトラブルを回避するため
遺言書は法的な効力を持ち、相続における財産の分割は原則遺言書の通りに行われるため、不要なトラブルを回避することができます。
- 法定相続人以外にも財産を残すことができるため
遺言書を残すことで法定相続人以外にも財産の受取人を指定することが可能です。遺言書がない場合は法定相続人しか財産を受け取る権利を持たないため、法定相続人以外の受取人を指定したい場合は必ず遺言書を残しましょう。
おひとりさまの場合、遺言書がないと、残された財産は手続きを経て国のものとなります。財産を残したい人がいる場合は遺言書が必須です。
遺言書作成手順の一例
- 自分が保有する財産・負債を把握し、財産目録を作成する
- それぞれの財産において、誰にどのくらい相続させるか決める
- 遺言執行者(遺言の内容を実現させる責任者)を決める(任意)
- 遺言書を書く 封筒に入れ、封印する
※必要に応じて公証人に作成や確認の依頼をします。
遺言書の種類
遺言書には3つの種類があります。それぞれの遺言に特徴、メリット・デメリットがあるため、よく把握した上で遺言書の作成を始めることをおすすめします。
自筆証書遺言
全て自筆で書かれた遺言書です。財産目録のみ、パソコンなど自筆以外での作成が可能です。(自書でない部分がある全てのページに遺言者の署名と捺印が必要です。)
下記の要件を全て満たすことで、法的効力が発生します。◆自筆証書遺言の要件
- 財産目録をのぞき、全文自筆であること
- 遺言者の署名と明瞭な捺印があること
- 作成日が明記されていること
- 訂正の際、規定の訂正ルールが守られていること
- 自分1人で作成が可能
- 特別な費用は不要
- いつどこにいても、ペン・紙・印鑑があればすぐに作成できる
- 要件を満たしていない場合は遺言が無効になる恐れがある
- 紛失、書き換えのリスクがある
- 開封時、家庭裁判所の検認が必要(開封に時間と手間がかかる)
※家庭裁判所の検認…相続人に対して、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の偽造・変造を防止するための手続き。
紛失・書き換えのリスクに備え、2020年7月より開始された「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、法務局で遺言書を保管することが可能です。
(作成には決められた様式があります。また、手数料が必要です。)
この制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認は不要です。
遺言書の詳しい書き方は、下記の外部サイトもご参照ください。
※外部リンク
「知っておきたい遺言書のこと 無効にならないための書き方、残し方|政府広報オンライン」
※外部リンク
「遺言書の様式等についての注意事項・自筆証書遺言書保管制度|法務省」
公正証書遺言
公証役場で公証人によって作成される遺言書です。公証人と遺言者の他に、2人以上の証人の同席が必要です。全員で内容を確認した上で署名・捺印し、完成します。
※公証人…裁判官、検察官などの法律実務の経験者で、公募の中から法務大臣に任命される準国家公務員のこと。
【メリット】
- プロが作成するため、無効になる恐れはほぼなし
- 公証役場に原本が保管されるため、書き換え・紛失のリスクがない
- 家庭裁判所の検認が不要なので、スムーズに相続の話し合いを開始することができる
【デメリット】
- 作成に時間と費用がかかる
- 証人を2人以上依頼する必要がある
- 公証人と証人に遺言の内容を話さなくてはならない
秘密証書遺言
手書きやパソコンなどで自身が記した遺言書に封をした後、公証役場へ持参し、遺言書の存在を公証人と2人以上の証人が確認したものです。
【メリット】
- 遺言の内容を人に知られることがない
- パソコンや代筆でも作成が可能
- 公正証書遺言に比べると費用が安い
【デメリット】
- 証人を2人以上依頼する必要がある
- 要件を満たしていない場合は遺言が無効になる恐れがある
- 紛失のリスクがある
- 開封時、家庭裁判所の検認が必要(開封に時間と手間がかかる)
遺言書の「付言事項」について
遺言書には「付言事項」を記すことができます。「付言事項」とは、遺言内容に至るまでの動機や心情を記したものです。法的な効力はありませんが、被相続者の思い・最後のメッセージを相続人に伝える方法として活用されるとよいでしょう。
遺言書の注意点
遺言書は法的効力を持つため、相続は原則遺言書の通りに行われますが、2点注意すべきことがあります。
- 相続人全員が同意(納得)すれば、遺言書の内容に従わなくてもよい
特定の方のみが優遇される内容の遺言書などは不公平感から反対意見が噴出しやすく、遺言書の通りにならない可能性があります。
- 遺留分は侵害できない
遺留分とは、相続人に最低限保障されている遺産の取り分のことです。
(法定相続割合の2分の1または3分の2)
相続の発生から1年以内に意思表示した場合に遺留分の権利が保障されます。
(例) 親から子2人への相続
遺言書には長男に全ての財産を相続させると記載されていたが、次男が遺留分を請求すれば、最低限の遺産の取り分(今回の場合は全財産の1/4)が保障される。
※遺留分を請求できるのは、配偶者、直系卑属(子)、直系尊属(父母や祖父母)、代襲相続人(孫など)です。兄弟姉妹には請求権がありません。
どうしても遺産を相続させたくない法定相続人がいる場合は、「相続人の廃除」が必要です。「相続に関するよくある質問」で詳しく解説しています。
相続税はいくら?基礎控除額と税率
相続した財産には相続税が課税されます。ただし、基礎控除の金額内であれば納税の義務はありません。
ここでは、基礎控除金額の計算方法と、相続税の税率について、例を掲載しながら解説します。
相続税とは?基礎控除額の計算方法は?
遺産には「相続税」が課されます。ただし、相続税の基礎控除額に収まる場合は、申告や納税は不要です。
◆相続税の基礎控除額
【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】
(例) 法定相続人が配偶者と子2人の場合の基礎控除額
3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
4,800万円までは申告・納税は不要です。
- 借入金や葬儀費用は遺産総額から差し引くことができます。
- 相続放棄をした方も法定相続人の1人としてカウントされます。
- 養子は実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで法定相続人に含めます。
基礎控除を超えたら、相続税はいくらかかる?
遺産が基礎控除額を上回る場合、相続人ごと遺産の取得金額に応じて相続税の申告と納税が必要です。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
※出典…「No.4155 相続税の税率|国税庁」 ※外部リンク
(例) 被相続人が残した遺産(相続税の課税対象額)が、借入金や葬儀費用などを差し引いて8,000万円で、配偶者と子2人が相続する場合
基礎控除額…3,000万円+(600万円×3 ※法定相続人の数)=4,800万円
基礎控除を超過する額…8,000万円-4,800円=3,200万円
基礎控除額を超える3,200万円に相続税が発生します。
今回は法定相続として、民法で決められた割合で遺産を分け、相続税額を算出します。
- 配偶者…2分の1
3,200万円÷2=1600万円
1,600万円×相続税率15%-控除額50万円=相続税額190万円 - 子1人あたり…4分の1
3,200万円÷4=800万円
800万円×相続税率10%=相続税額80万円
このケースでは、全員合わせて350万円の納税が必要です。
※ただし条件を満たせば、配偶者が相続した課税対象の遺産が1億6,000万円まで非課税になる「配偶者控除」、子が未成年の場合は「未成年者控除」を受けることができます。
相続税は、配偶者、一親等の親族(子、父母)、代襲相続人の孫をのぞき、2割加算となるので注意が必要です。
相続税の申告・納税期限はいつまで?
相続税の申告と納税は被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内に必要です。期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が課されます。遺産の分割協議中であっても、相続税の申告・納税は忘れずに行いましょう。
相続税の節税対策4選
基礎控除額や各種控除額(配偶者控除など)を超える場合は、財産額に応じた相続税の納税義務が相続人に発生します。財産が高額になるほど相続税も上がるため、生前から節税対策が必要です。
ここでは、節税対策方法を4つご紹介します。
1. 生前贈与
相続税対策として最も一般的なのが、「生前贈与」です。「相続」と「贈与」の違いですが、「相続」は自身の死後に財産を相続人へ受け継いでもらうのに対し、「贈与(生前贈与)」は自身が生きているうちに、財産を渡したい人へ受け渡すことをいいます。
贈与には、税金を抑えるために役立つの2つの制度があります。
暦年課税制度
1年間(1月1日~12月31日)に贈与された財産の合計額に応じて課税することを「暦年課税」といいます。生前贈与には「贈与税」が課されますが、基礎控除額(年間110万円以内)であれば非課税で贈与することができます。
ただし、年間110万円を超える贈与や、定期贈与(定期的に一定金額の贈与を約束しているケース)とみなされた場合、贈与額に応じて10%から最大で55%の贈与税がかかるため注意が必要です。
また、相続開始前3年(2024年1月1日以降に発生した相続は7年)以内に贈与された財産は、相続税の課税対象となります。
相続時精算課税制度
「相続時精算課税制度」は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子・孫に財産を贈与するための制度です。贈与累計2,500万円までは非課税で贈与することができます。2,500万円を超えた部分には、一律20%の贈与税がかかります。
最初の贈与を受けた後、翌年の2月1日から3月15日までに「相続時精算課税制度選択届出書」と必要書類を税務署へ提出することが必要です。
※相続時精算課税制度を一度選択すると、暦年課税制度に戻すことはできません。
相続時、この制度を利用して贈与した財産の価額(贈与時の時価)が相続税の課税対象額に加算されます。そのため、将来価値が上がると想定される財産を生前贈与することで、相続税の節税ができます。相続時、生前に納めた贈与税を精算し、差額の相続税を納めます。納めた贈与税が相続税の金額を超える場合は、超過した分が還付されます。
相続時精算課税制度の場合、贈与が行われた際、贈与税が発生しない場合でも金額に関わらず一定期間内に贈与税申告の提出が必要です。ただし、2024年1月からの法改正により、特別控除の2,500万円とは別に、年間110万円までの基礎控除が認められます。年間110万円までは、贈与税の申告と納税が不要で相続税の課税対象にもなりません。
2. 不動産の購入
不動産の相続税評価額(課税対象額)は、時価(市場価格)より低くなるため、現金を手元に置いておくより不動産に替える方が相続税が抑えられます。
金融機関の借入(ローン)で不動産を購入した場合でも、借入金を課税対象額から差し引くことができます。
ただし、不動産は、購入や維持管理に費用・手間がかかることや、価値が変動しやすいというリスク・デメリットがあります。また、不要な不動産の相続は相続人の負担となること、借入金(ローン)も相続の対象になるという点にも注意が必要です。不動産の購入は家族でよく相談して判断しましょう。
3. 生命保険へ加入
死亡保険金や死亡退職金など、被相続人が亡くなった事で発生する財産を「みなし相続財産」といいます。
みなし相続財産は「500万円×法定相続人の数」が非課税となりますので、生命保険は相続税対策として用いられることがあります。
死亡保険金(みなし相続財産)は遺産分割の対象外で、受取人固有の財産として扱われます。そのため、死亡保険金を残したい人を受取人にすることで、希望通りに財産を残せる可能性が高くなります。相続放棄(一切の財産を受け取らないこと)をしても受け取ることができます。
4. お墓・お仏壇の購入
お墓や土地の使用権、お仏壇・お仏具などといった「祭祀財産」は相続税の課税対象にならないため、死後に購入するより生前に購入しておくことで相続税の節税になります。
生前に準備しておきたいお墓・お仏壇
お墓・お仏壇と言った「祭祀財産」は、死後に準備するより生前に準備しておくことで相続税を節約することができます。
ここでは、墓所やお仏壇を選ぶ時のポイントについてご紹介します。
お墓の選び方
お墓がない場合、生前に納骨先を検討しておきましょう。
跡継ぎとなる方がいらっしゃる場合は、寺院墓地や民間霊園で一般墓を建てておくことで、次世代の方々が納骨先に困らないため、安心です。
寺院墓地は、基本的にはそのお寺の檀家になる必要がありますが、供養が手厚いことが魅力です。民間霊園は宗教・宗派を問わない所が多く、区画の大きさや位置、墓石の形状などについて選択肢が広いことが特徴です。 天候に左右されない屋内納骨堂も人気です。
近年は納骨形式が多様になり、永代供養墓、合祀墓、樹木葬、散骨(海洋葬)といった、次世代に管理費を負担させない墓所・方法も増加しています。跡継ぎがいない方でも安心してお求めいただけます。
>>霊園・墓所を探す
>>お墓(墓地)の種類に関する基礎知識
お仏壇の選び方
自宅にお仏壇がない場合や買い替えが必要な場合は、跡継ぎの方とよく相談し、適切な大きさ・デザインのお仏壇を選ぶことをおすすめします。家族の意見を取り入れずに選んでしまうと、後で置き場所に困ったり、自宅の雰囲気とお仏壇のデザインが合わないなどといったトラブルが発生する場合があります。
また、宗派によってご本尊や使用する仏具が異なります。お寺の檀家になっている場合は、僧侶にも事前に相談しておくと安心です。購入の際は、専門店で仏事に詳しいスタッフに相談するか、分からないことを気軽に問い合わせできるオンラインショップの利用をおすすめします。
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相続に関するよくある質問
終活・相続に関するよくある質問4つについて、回答いたします。
Q1. 相続にかかる費用はどの程度ですか。
A. 自身で相続のお手続きをされるか、専門家に手続きの代行を依頼するかによって大きく異なります。
自身でお手続きされる場合は、必要書類の準備のため約3,000円~2、3万円程度かかります。法律の専門家(弁護士、税理士、司法書士、行政書士など)に依頼する場合は、遺産総額によって金額が異なりますが、10万円~60万円程度が相場です。不動産の名義変更を司法書士に依頼する場合の目安は5万円~10万円程度です。別途、土地の評価額に応じた登録免許税が必要です。
相続のお手続きは大変煩雑なため、費用はかかりますが専門家に依頼をするのが無難です。
Q2. 子どもに借金を残したくありません。借金のみ相続させないことはできますか。
A. マイナスの資産のみ相続放棄することはできませんが、限定承認という相続の方法があります。
限定承認とは、被相続人が残したプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ相続のやり方です。
借金がどれだけあるか分からない場合、引き継ぎたくない財産がある場合、借金を負担したくないが、自宅は受け継ぎたいという場合などに選ばれるやり方です。
引き継ぐ債務を相続財産の範囲内に収めることで、相続人の固有財産を守ることができます。ただし、相続人全員の合意が必要で事務手続きが煩雑であることがデメリットです。
相続のやり方は他にもあります。
-
相続放棄
一切の財産を相続しないやり方です。
マイナスの財産がプラスの財産より圧倒的に多い場合や、相続財産が不要な場合などに選ばれます。限定承認と異なり、相続人単独の意思で決めることができます。同順位の相続人が全員相続放棄した場合、次の相続順位の方へ相続権が引き継がれます。 -
単純承認
亡くなった人の財産・債務を全て引き継ぐやり方です。
思わぬ借金・負債が見つかった場合でも引き継がなくてはならない(相続人の固有財産から弁済の必要がある)ので、しっかり相続財産の調査をする必要があります。
相続放棄、限定承認は、被相続人が亡くなって相続することを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出しなくてはならないため、期限(時効)に注意しましょう。
Q3. 財産を相続させたくない者がいます。遺言書に記載すれば問題ないでしょうか。
A. 遺言書に記載するだけでは不十分な場合があります。「相続人の廃除」を検討しましょう。
相続人が遺留分(相続人に保障されている最低限の遺産の取り分)を請求した場合、遺言書の内容より優先されるため、財産を渡したくない相続人に財産が渡ることがあります。そのため、「相続人の廃除」の手続きをしましょう。
「相続人の廃除」とは、被相続者が生前手続き、または、遺言書に意思表示をすることで、特定の相続人の地位(相続する権利)を失わせることです。
ただし、相続人の廃除が認められるには条件があります。
- 相続人が被相続人に暴力や暴言を与えている
- 相続人が犯罪を犯した
- 被相続人の財産や名誉を侵害した など
上記のような相続人による虐待や重大な侮辱・非行が認められた場合に限ります。不仲や個人的感情では相続人の廃除は難しいでしょう。(相続廃除が認められたのは申請の約2割という統計もあります。)
相続の廃除の対象となるのは、配偶者、子や孫(直系卑属)、父母や祖父母(直系尊属)です。(遺留分が認められている法定相続人)
また、遺言書にて相続人の廃除を明記する場合は、遺言執行者の指定が必要です。
相続人が相続秩序を侵害する非行(遺言書の偽造・破棄、恐喝など)を行った場合は、被相続人の意思に関わらず、相続権利が剥奪されます。(相続欠格)
Q4. 遺言執行者とは何ですか。遺言書で必ず指定しないといけませんか。
A. 「遺言執行者」とは、遺言の内容を責任をもって実行する人のことで、遺言書で指定できます。指定は任意です。
遺言執行者は未成年と破産者以外なら、誰でもなれます。相続人を指定しても問題ありません。ただし、スムーズに相続を進めるために、弁護士・司法書士などの専門家に依頼することがおすすめです。
遺言執行者の選任は任意ですが、「相続人の廃除」、子の「認知」の手続きを行う場合は必須です。
終活・相続に関する無料相談は、はせがわへ
相続や遺品整理、不動産など、葬儀後に発生する様々なお悩みに関して、誰に相談したらいいかお悩みではありませんか。はせがわでは各種専門家と協力してお客様をお手伝いする「ピースフルライフサポート」サービスをご提供しております。もちろん、終活に関する生前のご相談も可能です。
初回のご相談は無料です。最寄りのはせがわ店舗だけでなく、お電話やオンライン相談も可能です。
はせがわの終活サポートサービス「終活なむでもパック」
お仏壇のはせがわでは、お客様の終活をサポートするサービス「終活なむでもパック」もご提供しています。
「終活なむでもパック」は、お客様のお困りごとに応じて安心な事業者、専門家を紹介するサービスです。ご相談は無料で承ります。
ご自身の葬儀や納骨、お仏壇やお墓の管理、お部屋のお片付けなど、終活に関する様々なお困りごとをお持ちの方は、ぜひはせがわにご相談ください。
■葬儀後の手続きについて詳しくはこちら
年金や保険などの公的手続き、遺産相続手続き、葬儀や法要といったご供養のことなど、葬儀後に必要な手続きを一覧にして手順を詳しく解説しています。
この記事を監修した人
司法書士・行政書士法人オーシャン
横浜・渋谷・藤沢エリアを中心に、年間2,000件超の相続業務を担当する国内屈指の相続専門事務所。また、グループ内の株式会社では、相続遺言関連業務に特化した国内最大級の士業向け勉強会(相続遺言実務家研究会)を運営し、全国の士業に対する業務レクチャーも担当。
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