お仏壇にろうそくを灯す意味
お仏壇へのお供え物は「五供(ごく)」が基本です。
五供とは、「香」「花」「灯明(とうみょう)」「浄水(じょうすい)」「飲食(おんじき)」の五つで、ろうそくの火(灯明)は五供の一つです。
また、灯明はお線香や生花と合わせて「仏の三大供養」ともいわれ、お仏壇にお参りする際には欠かせない重要なお供え物とされています。
ここでは、お仏壇にろうそくをお供えする具体的な意味・理由について解説します。
お仏壇にろうそくはなぜ必要?
ろうそくの火をお供えする意味は4つあります。それぞれ詳しく解説します。
「仏様の智慧と慈悲」を象徴している
電気がなかった時代、暗闇を照らすろうそくの灯りは非常に重要で神聖なものと考えられ、特別な儀式で使用されていました。
ろうそくの灯りが暗闇を照らすように、仏教の教えがすべての人の心の闇(悩みや苦しみ)を照らし出し、救済しようとすることから、お仏壇のろうそくの灯りは「仏様の智慧」を表しています。
また、ろうそくの熱がお参りする人の心をあたため、慰めてくださることから「仏様の慈悲」を表しているともいわれています。
仏様の教えを表している
ろうそくはお仏壇に左右一対で飾るのがより丁寧なお供えの仕方ですが、それには理由があります。
それぞれの灯りは「自灯明」「法灯明」と呼ばれ、自灯明は「自分を信じること」、法灯明は「真理(正しさ)を頼りにすること」を意味します。つまり、「人の意見や考えに左右されず、正しさを頼りとし、自ら考え自分を信じて精進するように」という仏様の教えを表しています。
また、ろうそくの火はいずれ燃え尽きて消えることから、仏様が私たちに「無常(いつまでも変わらないものはないという考え)」を教えてくださっているとも考えられています。
邪気を払い周囲を浄化する
ろうそくの灯りで暗闇を照らすことで、悪しきものや邪気を払い、周囲を浄化する効果があると考えられています。
あの世とこの世を繋ぐ役割がある
ろうそくの灯りには「あの世とこの世を繋ぐ架け橋」としての役割があり、お盆などにご先祖様が迷わず現世へ帰って来るための目印・道しるべになります。
そのため、お盆にはお仏壇のろうそくの他にも迎え火や盆提灯を灯し、華やかにお迎えします。
お仏壇のろうそくの本数と位置
ろうそくの位置・飾り方に絶対的な決まりはありませんが、一般的な方法を知っておくと法事の際も安心です。ここでは、ろうそくを飾るために必要な仏具、飾る本数と位置といった基本知識を解説します。
ろうそくを飾るために必要な仏具
ろうそくは「ろうそく立て(火立)」を使用してお仏壇にお供えします。
浄土真宗など、宗派や地域によっては色・形に決まりがあるため、ご購入前に菩提寺に確認されると安心です。
■ろうそく立て(火立)について詳しくはこちら
ろうそく立ての種類・選び方のポイントを中心に、ろうそく立てが必要な理由、安全に使用するための注意点、代用品や掃除方法を解説します。
ろうそくを飾る本数
お仏壇に飾るろうそくの本数は、1本または2本です。左右一対(2本)お供えするのがより丁寧な形ですが、台の上に置くコンパクトなお仏壇の場合は1本でも問題ありません。また、日常のお参りでは1本でも、法事など特別な場面では左右一対(2本)お飾りすることもあります。
お仏壇にろうそくを置く位置
ろうそくを置く位置は、お仏壇の最下段の薄引き出し(膳引き)の上です。
◆三具足の場合
香炉、ろうそく立て、花立を1つずつ飾る「三具足(みつぐそく)」の場合、中央に香炉を置き向かって右にろうそく立て、左に花立を飾ります。
◆五具足の場合
香炉に、ろうそく立てと花立を一対にしたものを加えた「五具足(ごぐそく)」の場合、ろうそく立て・花立は左右一対に飾ります。
■お仏具の飾り方について詳しくはこちら
宗派やお仏壇の大きさに合わせた仏具の飾り方について、詳しく図解しています。
お参りの作法と火災防止の注意点
お仏壇にお参りする際は、お線香への火の点け方やろうそくの火の消し方など、マナーを守った振る舞いができるとスマートです。ここでは、ろうそくを使用する際の作法について解説します。
また、安全に使用するために気を付けたいポイントもあわせてご紹介します。
ろうそく使用時の作法
お仏壇でろうそくを使用する際、守りたい作法・マナーについて解説します。
お線香に火を点ける時は、ろうそくの火を使う
お線香に火を点けるときは、ライターやチャッカマンなどから直接点けるのではなく、ろうそくの火を使いましょう。
ろうそくに火を灯すことで、周囲の邪気を浄化し、あの世とこの世を繋ぐ役割があると考えられているためです。
ろうそくの火は吹き消さない
ろうそくの火を消す時は、手で扇ぐか専用の仏具(ろうそく消し・火消しなど)を使用し、息で吹き消すのは避けましょう。仏教では、人間の吐息は「不浄(穢れたもの)」だと考えられているので、灯明を吹き消すのは仏様に失礼だと考えられているためです。
ろうそくの火を消すタイミング
ろうそくの火はつけっぱなしにする必要はなく、お参りが終了したら消して構いません。お仏壇を離れる時は、安全のためにも必ず火を消してから立ち去るようにしましょう。
■お参りの仕方について詳しくはこちら
「リンって何回鳴らすの?」「お線香は何本?」などといった疑問を、お参りの手順と合わせてお答えします。弔問(訪問)でのお参りについても解説しています。
安全に使用するための注意点
ろうそくは使い方を誤ると火災の原因になります。ここでは、火事を防止し安全にろうそくを使用するために気を付けたいポイントをご紹介します。
ろうそく立てより大きいろうそくの使用は控える
ろうそくが大きすぎると、ろうそく立てが不安定になり倒れる可能性があります。日常的なお参りに使用するろうそくは、5~15分程度で消える小さめなろうそくの使用がおすすめです。
ろうそくの上部に何もないことを確認する
火を付けたろうそくの上部は、直接火が当たっていなくても高温です。お仏壇の内部でろうそくを付けると、上部が燃えることがあります。
ろうそく立ては薄引き出し(膳引き)の上に置き、上部に何もないことを確認して火を付けましょう。
ろうそく立てはこまめにお手入れを
ろうそくを長期間使用していると、ろうそく立てに古いろうが固まり、交換の際に新しいろうそくが立てづらくなることがあります。不安定なろうそくが落下する恐れもあるため、ろうそく立てのこまめなお手入れをおすすめします。
60℃以上のお湯にろうそく立てを浸し、溶けたろうと水分をきれいにふき取ります。古い芯が付着している場合は取り除きましょう。
先の尖った物でろうを取り除こうとすると、仏具を傷つける原因になるため避けましょう。
防火性のお仏壇マットを使用する
ろうそく立てや香炉の下に防火性の仏壇マットを敷いて使うと、万が一の場合でも火が燃え広がりづらくなります。お仏壇の大きさに合わせて自由にカットできるタイプが使いやすくおすすめです。
安心の電池・電気式ろうそく
火災の恐れがある場合や、施設入居などにより火を使用できない場合は、電池・電気式ろうそくの使用がおすすめです。
本物のろうそくを模して作られており、電源(スイッチ)を入れるとLEDのライトが付いてお仏壇の中を明るく照らしてくれます。離れていても使えるリモコン式もあります。万が一、灯りを消し忘れても火災の心配がなく安全です。
高齢者や小さいお子様がいらっしゃるご家庭でも安心してご使用いただけます。
■お仏壇の火事対策について詳しくはこちら
お参り時の火事を防ぐための対策を6つご紹介します。また、お子様がいるご家庭でも安心な、火を使わない電池式のLED線香・LEDローソクもご紹介します。
ろうそくの種類と選び方
お仏壇にお供えするためのろうそくには様々な種類があります。目的や用途によって使い分けましょう。ここでは、基本的なろうそくの特徴、ろうそく選びの5つのポイントとそれぞれのおすすめ商品をご紹介します。
ろうそくの種類と特徴
ろうそくは、原料・製造方法で分けると「和ろうそく」と「洋ろうそく(西洋ろうそく)」の2種類があります。
-
和ろうそく
蜂の巣から作られる「蜜蝋(みつろう)」や、櫨(はぜ)の実を絞って作られる「櫨蝋(はぜろう)」など、原料に植物性油脂が使われており、ススが出ずらくエコで高品質なろうそくです。 -
洋ろうそく
原料には主に石油から採れるパラフィンワックスが使われており、大量生産が可能なため、世界中で広く使用されています。
※パラフィンは牛乳パックや化粧品にも使われる安全性の高い原料です。
◆ろうそくの歴史
日本へろうそくが伝えられたのは奈良時代(6世紀後半)で、仏教の伝来とともにやってきました。この頃、主に使用されていたのは「蜜蝋(みつろう)」で、非常に貴重なものでした。そのため、貴族や寺院の僧侶が特別な儀式でのみ使用してきました。
鎌倉時代には「漆蝋(うるしろう)」が中国から伝わり、ろうそくが武士に普及します。室町時代には和ろうそくが生まれ、様々な地域で作られるようになりました。
ろうそくが庶民にも普及し始めたのは江戸時代に入ってからです。その後、18世紀半ばには石油からパラフィンが発見されたことにより、大量生産が可能になり、世界中で急速に普及していきました。
ろうそく選びのポイント
ろうそく選びの5つのポイントは下記のとおりです。
- 値段
- 用途
- サイズ(燃焼時間)
- 色
- 形状・デザイン
それぞれ詳しい解説とおすすめ商品を合わせてご紹介します。
値段
一般的に、洋ろうそくは和ろうそくより安価です。大量生産により入手しやすいためです。
和ろうそくは、原料の蜜蝋や櫨蝋などの植物性油脂が希少で高価なことや、生産に手間や時間がかかるため、洋ろうそくに比べ値段が高いことが多いです。
用途
自宅での使用
一般的に日常のお参りにはシンプルで安価な洋ろうそくが広く使用されています。燃焼時にススが出づらい「蜜蝋」もおすすめです。
法事など、長時間火を灯す必要がある場合は、サイズ・燃焼時間も考慮して選ぶことをおすすめします。
ギフト・贈答用
大切な人への贈り物には和ろうそくがおすすめです。花などのおしゃれな絵柄が手描きされたろうそくや、彩りの美しいろうそくなど、ご進物向きの様々な種類があります。
また、お菓子や飲み物をモチーフとしたキャンドルである「故人の好物」シリーズや、小ぶりで使いやすくメッセージ入りの「ありがとうろうそく」も人気です。
サイズ(燃焼時間)
ろうそくは一般的に、大きいほど燃焼時間が長くなります。
燃焼時間の短いもの
日常のお参りに使用するろうそくは、燃焼時間が5分~15分程度の小さいろうそくを選ばれることをおすすめします。火災防止のためにも、お仏壇やろうそく立てのサイズに合わせて、大きすぎないろうそくを選ぶことが重要です。
燃焼時間の長いもの
葬儀から四十九日法要までの間や、法要時、お盆・お彼岸の際は、燃焼時間が長いろうそくが必要になるケースもあります。
その場合は、蓮の形をしており約16時間燃焼可能な「ブロンマ」や、小型のコップに入っている「コップろうそく」を使用すると安全に長い時間火を灯すことができます。「形状」の項目でも詳しく解説しています。
色
浄土真宗や一部地域では、ろうそくの使用場面に合わせて使う色を変えることがあります。主に、白色、赤色(朱色)、金色、銀色が使われます。
一般的に、白色は日常的なお参りや法事で使用され、赤色(朱色)や金色はおめでたい場面で使用されます。それぞれ具体的な使用場面をご紹介します。
-
白色
日常的なお参り・お勤め、葬儀、四十九日法要、一周忌、三回忌頃までの年忌法要・祥月命日・月命日など -
赤色(朱色)
七回忌からの年忌法要、報恩講(浄土真宗の法要)、お盆・お彼岸、お正月、仏前結婚式、お仏壇の入仏式やお墓建立時など -
金色(赤色で代用可能)
仏前結婚式、落慶法要(寺院の新築や改修のお祝い) -
銀色(白色で代用可能)
通夜、葬儀、中陰法要(四十九日までの間、7日ごとに行われる法要)
その他の色については特に決まりはありません。お仏壇を華やかにお飾りしたい時や季節に合わせてろうそくの色を変えてもよいでしょう。
形状
一般的な細長いろうそくの他にも、様々な形状のろうそくが販売されています。それぞれ用途や目的に合わせて選ばれることをおすすめします。
故人の好物シリーズ
食べ物や飲み物を模して作られたキャンドルです。
キャンドルとしての使用はもちろん、食べ物が傷みやすい夏場など、本物の食べ物や飲み物の代用品としてお供えすることもできます。
ブロンマ
蓮の形をしたろうそくです。セットになっている陶器の台に乗せて使用します。
約16時間燃焼することが可能です。そのため、法要やお盆・お彼岸で長時間灯りが必要な場面などで役立ちます。
コップローソク
ガラスコップに入れて使う、シンプルで扱いやすいろうそくです。長時間(約8時間)使用でき、転倒の心配も少ない形状のため、法要時に便利です。
ペット用キャンドル
近年はペット供養のためのキャンドルも数多く販売されています。ペットのご飯・お菓子を模して作られたものや、かわいい色付きキャンドルなどが人気です。
ろうそくが購入できる場所
ろうそくは、仏壇・仏具店、キャンドル専門店、スーパーマーケット、ホームセンター、100円均一ショップなど様々な場所で購入が可能です。多くの種類から選びたい場合は、仏壇・仏具店や専門店での購入がおすすめです。
また、通販、オンラインショップの利用も手間が無く便利です。
>>最寄りのはせがわ店舗を探す
>>はせがわオンラインショップはこちら
よくある質問
ろうそくに関する3つの質問について回答します。
Q1. ろうそくの適切な保管方法を教えてください。
A. 高温と直射日光を避けて保管しましょう。
ろうそくは熱や湿度に弱いため、高温になる場所や直射日光の当たる場所、湿度の高い場所は避けて箱に入れたまま保管しましょう。お仏壇の引き出しの中がおすすめです。
Q2. ろうそくの溶け方や揺らぎには何か意味がありますか。
ろうそくが不思議といつもより激しく燃えていますが、仏様からの暗示など何か意味はあるのでしょうか。
A. 仏教的な意味合いは特にありません。
ろうそくは空気の対流や個体差によって燃え方が変わるため、心配しすぎることはありません。
一対あるろうそくの片方だけ揺らぐのは、仏様からのメッセージやケガの予兆などといわれることもあるようですが、科学的な根拠はありません。
なお、ろうそくの不規則な揺らぎ(1/fゆらぎ)は人にとって心地の良いリズムであり、癒し効果があるといわれています。
Q3. 短くなったろうそくの捨て方に決まりはありますか。また、再利用法があれば教えてください。
A. ろうそくはごみとして処分して問題ありません。また、再利用法をいくつかご紹介します。
ろうそくは礼拝品(魂が宿る仏具)ではないため、処分時に特別な手順は不要です。自治体の分別ルールに従って処分しましょう。
また、基本的にろうそくはお仏壇で燃え尽きるまで使って問題ありませんが、一部余ってしまった場合などは下記のような再利用方法がおすすめです。
- 引き戸のレールに塗って滑りをよくする
- 風呂場タイルの目地など撥水加工したい場所に塗る
- 釘など金属のサビを防止したい箇所に塗る