お仏壇の向きに決まりはある?宗派別の置き方も紹介
結論として、お仏壇の置く向きに絶対的な決まりはありません。ご家族でお参りのしやすい場所を選んでいただくとよろしいでしょう。
最近は家族の集まるリビングにお仏壇を置きたいという希望も増えており、大きなお仏壇からモダンなお仏壇やコンパクトなお仏壇への買替えの相談も増加しています。
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お仏壇を置く向きに対する5つの考え方
お仏壇の置く向きに明確な決まりはありませんが、諸説あります。
よくいわれる5つの説とその理由をご紹介します。置く場所の候補が複数あった際の参考になさってください。
特定の方角に置くべきとする考え
1.南面北座説(なんめんほくざせつ)
南向きにお仏壇を置きます。
お参りする私たちは、北の方角を見て手を合わせることになる置き方です。
古代中国で君主(天子)が南を向いて座る慣習があったことに由来します。中国の長安をモデルに作られた、京都御所の紫宸殿(ししんでん)も同様に南を向いています。
ご先祖様を敬う気持ちから、この説に基づいてお仏壇も南に向けて置くという考え方が生まれたとされます。
曹洞宗・臨済宗では、宗派の信仰対象であるお釈迦様が説法(せっぽう)をする際に南を向いて座っていたとされることから、お仏壇も南に向けて置くことがあります。
2.西方浄土説(さいほうじょうどせつ)
東向きにお仏壇を置きます。
お参りする私たちは、西の方角を見て手を合わせることになる置き方です。
仏様のいる煩悩のない安住の地(極楽浄土)が人間界から遠くはなれた西にあるとされることに由来します。
「東面西座説(とうめんせいざせつ)」と呼ばれる説(インドでは立身出世する縁起の良い方角であり、主人は東向きに座るのが良いとされる)においても、同様にお仏壇を東向きに置きます。
浄土真宗・浄土宗・天台宗では、宗派の信仰対象である阿弥陀様が西方浄土(西)にいらっしゃるとの考えから、西の方角に向かって手を合わせるためにお仏壇は東に向けて置くことがあります。
3.本山中心説(ほんざんちゅうしんせつ)
宗派の本山がある方角に向くようにお仏壇を置きます。
お参りする私たちは、本山の方向を見て手を合わせることになる置き方です。
同じ宗派であっても自宅と本山の位置関係が異なりますので、置く向きは家庭ごとに異なります。
真言宗では宗派の本山、高野山金剛峰寺(こうやさんこんごうぶじ)がある和歌山県に向かって手を合わせます。お仏壇も本山のある方角に来るように置くことがあります。
どの方角に置いてもよいとする考え
4.春夏秋冬説(しゅんかしゅうとうせつ)
方角は気にせず、故人様が安らかに眠れる場所にお仏壇を置きます。
四季(春夏秋冬)を方角(東西南北)に当てはめた考え方です。どの季節も平等に恵みをもたらしてくれる大切なものであることから、どの方角も大切であり差をつけるべきではないとする説です。
- 春ー東 …芽吹きの季節
- 夏ー南 …実を結ぶ季節
- 秋ー西 …収穫の季節
- 冬ー北 …納めの季節
5.十方浄土説(じっぽうじょうどせつ)
方角は気にせず、お参りのしやすい場所にお仏壇を置きます。
東西南北、東南、西南、東北、西北、上下の十方向(全ての向き)にお浄土がある(仏様がいらっしゃる)との考えから、方角は気にせずよいとする説です。
日蓮宗では上記の考えとは別に、お仏壇を置く向きに関して特段のきまりはありません。自由に置いて問題ないとされています。
■無宗教の場合はどうする?
特定の宗教のない方でも、故人様へ手を合わせる場としてお仏壇をご用意される場合が増えています。
その際もお仏壇は自由な向きで置いていただき問題ありません。何か指針があった方が安心するという場合には、「南面北座説」に基づいて南向きに置いてもいいですし、太陽が昇る東に向かい手を合わせることができるよう西向きにお仏壇を置いても構いません。
お仏壇を置くのに適した場所は?仏壇配置の基本
かつては住宅にはお仏壇を置くための専用のスペースが設けられていました。今でもお仏壇は和室や仏間に置くイメージが強くあるようです。
しかし住環境の変化により、マンションなどでは和室がないことも多くなりました。いざお仏壇を用意するタイミングになってから「どこに置く?」とならないように、ここでは置く部屋の候補をご紹介します。
おすすめの置き場所(部屋)
お仏壇を置くのにおすすめな場所は、主に和室・リビング・寝室の3箇所です。基本的には「家族みんなが集まりやすい」もしくは「落ち着いてお参りができる」といった基準でお選びいただくといいでしょう。
それぞれのおすすめポイントをご紹介します。
和室(仏間・床の間)
仏間や床の間があるご自宅でしたら、そちらに置いていただくのが最適です。
床の間にお仏壇を置いていいのか不安に思われる方もいますが、元々は宗派ごとのご本尊やご先祖様を祀る場所(掛軸や香炉が置かれていた)でした。また床が一段高くなっていることから「格式がある場所」と考えられている場所となりますので、お仏壇を置いていただいても全く問題ありません。
リビング
洋室中心の生活が進み、中には「我が家は和室がなくフローリングだけ」ということも増えました。
そうしたことから生活の中心となったリビングをはじめ洋室に、お仏壇を置かれることが増えました。
家族が集まる場所のためみんなが手を合わせやすいことからも、お仏壇を置く場所として適しているといえるでしょう。
■お仏壇を「目立たせたくない」場合はどうしたらいい?
来客時に気を遣わせたくないなどの考えから、「リビングに置きたいけどお仏壇は目立たせたくない(目隠ししたい)」という方も増えています。
そういった場合は、棚の上に置ける「上置き仏壇」を選んでタンスや押し入れの上部に設置したり、ロールスクリーンを使って目隠しをするといったケースもあります。日々のお参りのしやすさの観点からはリビングやインテリアに馴染むデザインのモダン仏壇をお選びいただくとよいでしょう。
落ち着いたデザインのものも増えてきており、急な来客時にも扉を閉じるだけでさっと目隠しをすることができて安心です。
寝室
一日の終わりに落ち着いて手を合わせることができるため、中心となってご供養を行う方の寝室にお仏壇を置くこともあります。
故人様を敬う心に変わりはありませんので、寝室にお仏壇を置く自体ことには全く問題はありません。
寝る際、足が向く方向にはお仏壇を置かないように注意しましょう。
適さない置き場所
ここまではおすすめの置き場所を紹介してきました。ここからは反対に、お仏壇を置く際に避けた方がいい場所を4つのポイントでご紹介いたします。
熱気・乾燥のある場所
暑すぎる暖房は空気が乾き、木地にいたみが出てしまいます。お仏壇を置く部屋の湿度は、そこで過ごす人も快適に感じられる程度にしましょう。
光・照明の強い場所
他の家具など同様に、どのような光もお仏壇によい影響はありません。直射日光や過度に照明があたることは避けましょう。
床の傾きのある場所
水平にお仏壇を安置しましょう。傾いた床や台の上に置くとお仏壇の扉が勝手に開閉してしまうだけでなく、引き出しの開閉に不具合が生じたり、お仏壇本体の変形につながります。
硫黄(いおう)・塩分のある場所
温泉の近くなど硫黄成分が多いところ、海沿いなど潮風のあたるところは、お仏壇の金具や金箔がさびたり変色したりすることがあります。酸やアルカリ、人の汗の塩分なども、いたみの原因となります。
お仏壇に合わせた適切な置き方
お仏壇は大きく分けて、台の上に置くタイプ(上置き型)と床に直接置くタイプ(床置き型)の2種類があります。お仏壇に合った置き方でご安置するようにしましょう。
台の上に置くタイプ
タンスやチェスト、サイドボードなどの家具の上に置くタイプのお仏壇は、限られた小さなスペースでお仏壇を置くことができます。
>>モダンなお仏壇はこちら
>>伝統的なお仏壇はこちら
台がない場合は、床に直接置くタイプのお仏壇を選ぶか、台を購入しましょう。
■仏壇台(下台)はどんなものがオススメ?
どんなデザインの台でも構いません。お仏壇は上置きでもある程度重量があります。カラーボックスなどの使用は避け、安定感のある台を選びましょう。
・家具を台として使用する場合
テレビの横(テレビボードの上)や整理タンス、キャビネット、収納棚などを使用するケースが多く見られます。既にあるスペースをそのまま使用することができるため便利ですが、お線香の香りがついてしまう可能性がありますので注意が必要です。
・専用の仏壇台(下台)を使用する場合
お仏壇を置く用に作られています。お参りの際に座れる椅子や、お供え物や仏具が置けるように引き出せる台がついているなど、お参りの際に便利な仕様になっています。
はせがわの仏壇台(下台)
床に直接置くタイプ
床に直接置くタイプのお仏壇は、内部の空間が広くなるのでより正式なお仏壇のお飾りがしやすいメリットがあります。
和室であれば正座を、洋室であれば椅子に座ってお参りをする傾向にもあります。
はせがわでは「敷台(しきだい)」を扱っています。床(棚)とお仏壇の間に置きます。床(棚)に直接お仏壇を置くのではなく、一段高くしてさしあげることで神聖な祈りの場をつくることができます。またお掃除の際に掃除機がお仏壇にあたってしまうことも避けられます。サイズなどはお近くの店舗までお問い合わせください。
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お仏壇を置く際に注意すべきこと
ほかにも、お仏壇を置くに当たっていくつか気を付けていただきたいポイントがあります。
お仏壇と神棚の配置
「お仏壇と神棚を同じ部屋に置いてもいいの?」と気にされる方もいらっしゃいますが、同じ部屋に置いていただくこと自体は全く問題ありません。
しかし、それぞれの配置については注意すべきポイントが2つあります。もし同じ部屋に置こうと検討している方は気を付けましょう。
・お仏壇の上に神棚を祀らない
仏様、神様がどちらが上という考え方をしないため、また神様が仏様を踏む配置になってしまうため、上下の配置では置かないようにしましょう。
・お仏壇と神棚を向かい合わせで置かない
手を合わせた時に片方にお尻を向ける形になり失礼な行為にあたるため、対角線には置かないようにしましょう。
お参りする際の目線とご本尊(仏像)との位置関係
実際にお参りをする際に、お仏壇の中にお祀りしているご本尊(お仏像や掛軸)を見下ろしてしまわないよう、お仏壇を置く位置(高さ)にも配慮した場所選びが大切です。
目安としては、座ってお参りする場合は目より少し上、立ってお参りする際は胸よりも少し上の位置にご本尊がくる高さが理想的です。
お仏壇を置く予定の場所の寸法
お仏壇は、扉を開くとその分左右に幅を取ります。表記寸法の幅よりも15~20センチほどスペースに余裕を持たせる必要があります。 置く場所を決めたら、実際にお仏壇の検討に入る前にまずは設置予定場所の「高さ・幅・奥行」を測るようにしましょう。
また、大きいお仏壇を選ぶ場合は、場合によっては玄関や部屋の入口よりもお仏壇の幅が広く搬入できないケースもあります。搬入口の寸法も測っておくと安心です。
お仏壇を置いておく際、扉の開閉に決まりはある?
いざお仏壇の置き場所が決まった後に、日々の生活の中でお仏壇の扉をいつ閉めたらいいのか悩んでしまうこともあるかもしれません。
お仏壇の扉が持つ意味とあわせて、お仏壇の開け閉めタイミングに関して簡単にご説明いたします。
お仏壇の扉にはどんな意味がある?
お仏壇の扉は、仏様の世界(お浄土)と人間の世界(この世)の境界線としての意味を持つとされています。お仏壇は元々寺院の本堂をミニチュア化して自宅に持ち込んだものです。その本堂にあるご本尊をお祀りするための神聖な場所を「内陣(ないじん)」、その外側を「外陣(げじん)」と呼びます。
上記の考えにならい、お仏壇の内部を内陣(=仏様の世界)、外側を外陣(=人間の世界)として区別するために扉が付いているのです。
伝統的なお仏壇には扉が二重です。内側の扉を「障子」、外側の扉を「雨戸」と呼びます。お仏壇はご先祖様の家であるとの考えから、昔の日本家屋の構造を模して作られたことが理由とされています。
お仏壇の扉の開け閉めタイミング
「扉は常に開けっ放しでもいいの?」「いつ閉めたらいいの?」といった質問を多くいただくきます。基本的に、お仏壇の開閉タイミングに特段の決まりはございません。
よって、常日頃から仏様にお見守りいただくとの考えから、お仏壇の扉は常に開けたままにしておく形が一般的です。
ただし、夜はご先祖様もゆっくりお休みいただけるようにとする考えや、お寺の本堂の開閉タイミングに倣うとする考えから、地域によっては朝のお参り時に開け、夜寝る前に閉めるといった慣習がある場合もございます。
開けたままにした方がいい時
一方で、ご先祖様がご自宅に帰ってきているタイミングであることから、お盆期間は常に開けたままにしておくべきという考えがあります。
お仏壇とは別の場所に盆棚(精霊棚)を設置してお盆飾りをしているのであれば、お盆期間であっても閉じてしまって問題ないとされています。
そのほか、法事などで親族の方が集まる際にも、お供えやお参りが行われるため開けたままの方がよいとされています。
葬儀~四十九日の期間は閉めておいた方がいいの?
神道においては、死は「穢れ(けがれ)」であるとの考えから、お悔みごとがあった際には、穢れを神様に近づけないように喪が明けるまで神棚を封じる慣習があります。
一方、仏教では死を穢れとは捉えないため、基本的には、四十九日の間であってもお仏壇の扉は開けたままで問題はありません。
葬儀や法要の準備のためにバタバタしてお仏壇周りを騒がしくしてしまうことは失礼に当たるとの考えから、四十九日が明けるまではお仏壇の扉も閉めて置くべきとする意見もあります。
お仏壇の扉の開閉については、地域やご家庭の風習によっても大きく異なる部分です。決め兼ねた際はまず菩提寺にご相談いただくと安心です。
モダンデザイン仏壇
お仏壇は外側に開くタイプの扉が一般的です。近年は省スペースで置けるよう、スライド式(収納式)の扉や広角度で開閉できる扉が付いたモダン仏壇も登場しています。
「お仏壇を置けるスペースが限られているけど、おしゃれなデザインのお仏壇を置きたい」という方におすすめです。
よくある質問 (Q&A)
お仏壇は、仏様やご先祖様への敬いと感謝の気持ちを伝える場です。皆さまが集まりやすい場所が最適な置く所といえます。
最後に、お仏壇の置き方全般に関してよくある質問をご紹介します。
Q. お仏壇を置く階数に決まりはある?
A. お仏壇を置く階数に決まりはありません。1階・2階問わずお参りのしやすさで選んでいただき構いません。
注意点として、2階に設置する場合は、年を重ねた時にお参りの都度階段の上り下りが発生して大変になってしまう可能性があります。気になる場合はあらかじめ1階を選んだ方が安心と言えるでしょう。
神棚の場合はなるべく真上に何もないようにすべきとの考えがあります。もしお仏壇に対してもどうしても気になるという場合には、上にはなにもないということを表現した「空」「雲」「天」などの文字を書いた紙を天井に貼る形で対応いただけます。
Q. お仏壇の置き場所がない場合はどうしたらいい?
A. タンスやチェストなどの上を活用いただくか、ミニ仏壇など省スペースで置けるデザインのものを検討いただくとよいでしょう。
お線香の煙によってにおいが沈着してしまう場合があります。洋服ダンスなどは避けていただくとよいでしょう。
近年はお仏壇本来の形にとらわれず、故人様の写真や遺品などと一緒に自由な形で飾れるタイプの新型仏壇も登場しています。
Q. 地震対策はどうしたらいいの?
A. 大きく分けて、上下を連結できるお仏壇を購入するか、耐震グッズを購入するかの2つの対策方法があります。
床置きタイプのお仏壇においては、上台と下台をダボで繋ぐことでズレを防止できるお仏壇もあります。耐震グッズを使用することでも対策可能ですが、使い方によっては逆に不安定になってしまう場合もあります。
最寄りのはせがわまでご相談いただくと安心です。
Q. お仏壇の方向を決める時は、家相・風水も気にした方がいいの?
A. 家相や風水は気にせず自由に置いて大丈夫です。気になる場合は「鬼門(きもん)」の方角は避けて置くようにするとよいでしょう。
「鬼門(きもん)」である北東の方角は鬼(邪気)が出入りする方角とされ、お仏壇にもよくないとの説があります。 基本的には気にされず大丈夫です。どうしても気になる場合には北東は避けて置いていただくと安心です。また北向きも避けられることがあります。
- 風水…中国で生まれた気の流れを使った開運のための環境哲学のこと。日本にも伝わり、陰陽道や家相として取り入れられ、独自に発展していったと考えられている。
- 家相(かそう)…住宅などの建物の間取りの方位(方角)で運勢を占う方法。中国から伝わった思想が日本で陰陽道などと融合した考え方で江戸時代に広まったとされる。
まとめ
お仏壇を置く向きにはさまざまな説、いわれがあり、明確な決まりはないようなものです。お仏壇の扉の開閉タイミングについても同様に決まりはなく、基本的には常に開けたまま置いておいても問題はありません。
もしご心配であれば、お寺に相談をするのもよろしいでしょう。
一方で、お仏壇を置く場所は主に和室(仏間・床の間)・リビング・寝室のいずれかがよいとされ、適さない場所もはっきり決まっています。どう置くか悩んで決められないという場合は、はせがわのスタッフにご相談いただくことも可能ですので、是非お声掛けください。
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お仏壇は、仏様やご先祖様への敬いと感謝の気持ちを伝える場です。皆さまが集まりやすい、お参りをきちんとできる場所が最適な置く所といえます。
最終的にはご自身やご家族皆様のお気持ちで場所選びをされるとよろしいでしょう。
■お仏壇の選び方についてはこちら