香炉(こうろ)ってなに?
香炉(こうろ)はお線香を焚く際に使用する器のことです。主にお仏壇で使用するものをさす場合が多いですが、お墓、趣味や香道などで使用する器のことも含みます。
日本以外でも古くからお香、そして香炉はデザインや用途などは違えど使用されてきました。
- インドではスパイスが発達しており、また気温も高いことから匂いを防ぐためお香が使用されてきました。仏教儀礼以外にもさまざまなデザインの香炉が使用されています。
- 中国では紀元前3世紀ごろには青銅製の香炉が使用されていたそうです。時代によっては山をかたどった「博山炉(はくさんろ)」という香炉が盛行しました。お香を焚くと煙が立ち上る神仙思想をおもわせる幻想的な様子になります。
- キリスト教では儀礼で「振り香炉」が使用されることもあります。金属の鎖で繋がれた香炉で小ぶりなものから、大ぶりなものまであります。
どんな種類があるの?
日本における香炉の種類をお仏壇用・お墓用・部屋炊き用にわけて紹介します。
仏教ではお香は重要なものであり、「仏の三大供養」のひとつになります。焚かれた香煙は隅々まで行きわたり、空間を清めると同時に、お参りする人の心身をすがすがしく、安らかな気持ちにさせてくれます。それはまた、如来様の清らかで誰をも差別することのないお心を象徴しているといえます。
「仏の三大供養」とは?
花立・火立・香炉の3つで、「仏の三大供養」といわれ、大切なお供えといえます。
花は仏の慈愛と忍耐を、灯は仏の智慧を表し、香はお参りする人の身を清めるといわれています。
お仏壇で使う
香炉に灰を入れてお線香を焚きます。浄土真宗では線香は立てず、お線香を折り灰の上に寝かせます。その他の宗派では立てて使用されます。
器に足が3本ついているものは、1本が手前(私達側)になるように置きます。仏様に角をたてないようになどの理由があるとされています。
火を使えない環境などの理由で電池式の香炉(お線香)やローソクも登場しています。
お仏壇へのお仏具の飾り方についてお仏壇のはせがわが解説します。
前香炉
一般的に「香炉」とよばれるものです。地域や販売店によっては「線香炉」「机用香炉」などと表現することもあります。浄土真宗以外で宗派によるお仏具の指定がない場合は前香炉を使用します。
3.0寸は直径が約9cmになります。香炉の種類やデザインによってサイズは変わりますので確認が必要です。
従来の落ち着いたデザイン・色の香炉だけでなく、モダンなお仏壇にあうオシャレな香炉や、他のお仏具とセットになっているものもあります。
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土香炉(どごうろ)
浄土真宗本願寺派(お西)で使用される青磁の香炉になります。無地のものと宗紋がはいったものがあります。お線香は立てずに折り、灰の上に寝かせて焚きます。
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透かし香炉
真宗大谷派(お東)で使用される青磁の香炉になります。透かしの中に金属製の「なかご」という落としをいれて使用します。線香は立てずに折り、灰の上に寝かせて焚きます。
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火舎香炉(かしゃこうろ)
浄土真宗の本願寺派、大谷派で使用される焼香用の香炉になります。ふたに煙を出すための穴がついています。本願寺派では黒など焼き色のもの、大谷派では金色のものを使用します。花立・火立とセットになっているものもあります。
玉香炉
焼香で使用する香炉になります。お仏壇のコンパクト化により、置く場所が難しいため省略して置かない場合もあります。
長香炉
お線香を寝かせて使用する香炉になります。黒檀調・紫檀調といった落ち着いたものが多く、伝統的なお仏壇にあわせやすくなっています。
寝かせるタイプの香炉はシックなデザイン以外にも、花の柄が入ったおしゃれなデザインも登場しています。
焼香炉
お焼香をする香炉になります。法事などで香炉を参加者に回してお焼香をすることがあるため「回し香炉」ともよばれます。左側には灰と炭、右側にはお焼香を入れます。法焼香盆があると便利です。
お焼香にはお香・炭が必要になりますので忘れずに準備しましょう。
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お墓で使う
お墓でお線香を焚く際には、墓石にお線香を立てる用の穴がつくられています。そのほかでは「線香皿」を置いてお線香を寝かします。屋根が付いているものなどデザインはさまざまです。皿についている網は風で飛ぶ場合やカラスなどの鳥に持っていかれるなどありますので注意しましょう。網と線香皿を針金などでくくると予防になりよろしいでしょう。お線香は束になっているもの、自宅で使用する箱入りのお線香どちらも使用されています。箱入りのタイプはかさばるため、筒など小ぶりなケースで持参をすると便利です。
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お部屋で使う
お部屋でお香を楽しむ際の器は今まで紹介してきた香炉を使用しても問題ありません。大きさやデザインなどの理由から、お仏壇などで使用するものではなく、小ぶりな線香立てを使用する場合が大半です。灰を使用せずにお線香をたてるものが多くあります。
手づくりの焼き物、縁起のいい絵柄などさまざまな材質・デザインのものがあります。
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香炉には灰をいれよう
香炉でお線香を焚く際には灰が必要です。香炉にいれる灰のため「香炉灰(こうろはい・こうろばい)」ともよばれます。中には砂や粉といった表現をされる方もいます。香炉の6~7分目を目安に灰をいれましょう。
種類としては従来の一般的な灰、ビーズ状のモダンな灰に大きくわかれます。
スーパー、ホームセンター、100円ショップでも取り扱っている場合もありますが種類が限られていることが大半です。お香の専門店や仏壇仏具店では複数の種類を取り扱っていますので、購入にはおすすめです。
はせがわの店舗でも購入することができます。店舗検索はこちら>>
従来の一般的な灰
珪藻土灰(けいそうどばい)
珪藻土からできた白い灰です。珪藻土とは、藻類の一種の珪藻の殻の化石からできる堆積物(堆積岩)です。
藁灰(わらばい)
藁を燃やしてつくられた灰です。軽くて通気性がいいため、お線香が燃え残りにくいといわれています。
籾灰(もみばい)
籾を燃やしてつくられた灰です。やわらかい灰で線香が最後まで燃えやすくなっています。
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藤灰(ふじばい)
樹皮をはいだ藤を焼いてつくられた灰です。藤色をおびた白色をしており、化粧灰ともいいます。やわらかい灰で固まりにくく、最後までお線香が燃えやすくなっています。
藤灰(ふじばい) はこちら>>
ビーズ状のモダンな灰
洗うことで繰り返し使える灰も人気があります。クリスタル、ガラス、天然石などを砕いたビーズ状にした灰です。比較的粒が大きいため、従来の灰より若干少なめな量でも問題ないでしょう。
透明なものから石の色によってピンクや紫などがあります。モダンでおしゃれな家具調のお仏壇・お仏具にも映えます。複数を組み合わせて違った色味を楽しむこともできます。
接する部分のお線香は燃えにくくなります。お線香を寝かせて使用する場合は不向きのため注意しましょう。
天然のものは灰以外に、パワーストーンや浄化石としてお部屋で使用される方もいます。
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香炉灰のお手入れと処分について
お線香を焚くと、お線香の燃えた灰・燃え残りが発生します。そうしたものが香炉灰と混ざることで新しいお線香が立てにくい、香炉からあふれるといったことになります。また湿気がたまることでお線香を立てにくい・燃えにくいといった原因にもなります。定期的なお掃除が必要です。
お掃除の目安
なるべくこまめなお掃除が望ましく、お線香をあげる頻度も家庭により異なりますので決まりはありません。お線香が立てにくい、灰が固くなった時にはお手入れをしましょう。
また法事や命日などには灰をはじめお仏壇をきれいにしておきましょう。
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灰のお手入れについて
従来の一般的な灰
燃え残りのお線香が灰の中にたまっていますので取り除きます。割りばし・ピンセットで取る、茶こしを使用するといった方法もありますが、専用の道具を用意すると簡単にお手入れができます。
灰がこぼれる・舞ってしまっても大丈夫なように、庭など外で作業する・新聞紙を敷くなどの準備をします。網のついたスプーン状のもの、または砂時計タイプのものでお線香の燃え残りを取り除きながら、灰の中に空気をいれることで湿気を除きます。最後に「灰ならし」で表面を整えます。香炉が灰などで汚れている場合は柔らかい布(クロス)でお掃除も一緒におこないましょう。
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ビーズ状のモダンな灰
ビーズや天然石のものはそれそれお手入れ方法が違うことがありますので、確認をしましょう。お手入れをすることで繰り返し使用することができます。
香炉を軽くふることでお線香の燃え残りが下に移動し、灰と分離するので作業が楽になります。水で洗えるタイプのものは、目の細かいネットやザルにいれて水洗いをします。
洗ったあとは新聞紙などの上に広げて乾燥させます。その後、香炉に戻せばお掃除の完了です。
灰を処分する
処分方法ですが、まずは火の元(お線香が燃えきっているか)がないことを確認しましょう。庭がある場合は、肥料として土にまかれています。かたまってまくのではなく、まんべんなくまくとよろしいでしょう。
マンションなどで庭にまけない場合は、自治体の区分にそって処分します。新聞紙などに包み、可燃ごみとして処分されることが多いようです。
お線香の燃えた灰と混ざることや、使用期間が一定以上になるなどで灰に塊ができやすくなります。お手入れをしても使いづらくなりますので、新しい灰に取りかえましょう。
年に3~4回くらいを目安がよろしいでしょう。気になったタイミング以外では命日・お盆・お彼岸などで新しくされる傾向があります。
燃え残ったお線香は?
灰の中には1cm前後のお線香が燃え残りとしてあります。一般的には処分されています。中には下記のように工夫をして再度使用する方もいます。
- まとめて火をつけて焚く方法があります。
- 印香をつくることもあります。乳鉢ですりパウダー状にし、水を足しながら生地にします。均等に伸ばした後に型で抜き日陰でよく乾かします。火をともして香りを楽しみます。