遺品と形見の違い・意味はなに?
故人様が残したものを表すことばに「遺品」と「形見」があります。なにが違うのでしょうか?ここでは違いと意味、由来を説明します。
遺品(いひん)とは
「遺品」は故人様が残したものを広くさします。家具、家電、日用品、愛用品、服飾品などです。これらを整理することを「遺品整理」といい、相続することを「遺産相続」といいます。
故人様の所有する不動産以外のものすべて、と考えるとわかりやすいでしょう。
形見(かたみ)とは
「形見」は故人様が残したもので、その人を思い出すもの、心のよりどころになるものです。「形を見る」という漢字からも、そのものを見ることで故人様を思い浮かべるものであることがわかります。
仏教ではお釈迦様が弟子に遺品を残したことからはじまっているとされます。また日本では大切にしていたものには魂が宿るという考えから、形見分けが習慣となっています。
昔はものを多く持たなかったため、貴重なものは主に衣服でした。よって形見分けも衣類を中心におこなったため、「形見分け」のことを「裾分け(すそわけ)」「袖分け(そでわけ)」ともいいます。
タイミングは宗教で違うの?
遺品整理の時期に明確な決まりはありません。お悔み後すぐは悲しみも深く、整理・片付けをする気持ちにならないことが大半でしょう。また書類手続きも多く、時間的にも難しいです。気持ちの整理がついたタイミングでされるのがよろしいでしょう。
ここでは遺品整理・形見分けがよくおこなわるれるタイミングを宗教ごとに説明します。
仏教の場合
四十九日(忌明け)以降に多くおこなわれます。お悔み後の法要がひと段落するタイミングでもあるためです。法要のタイミングですと親族も集まりやすく形見分けもしやすくなります。
四十九日法要以外にも、一周忌などの回忌法要、お盆、お彼岸といった行事でされてもよろしいでしょう。
神道の場合
神道での忌明けである五十日祭以降におこなわれます。ほかにも一年祭(仏式でいう一周忌)など人の集まるタイミングが形見分けもしやすいでしょう。
基本的な考えは仏教と一緒になります。
キリスト教の場合
形見分けという習慣はないようですが、おこなれる際には記念式や追悼ミサなど親族が集まるタイミングでするとよろしいでしょう。日本では仏式の葬儀の習慣が根強いため、四十九日や1年後などのタイミングでおこなわれることもあります。
遺品整理と形見分けの流れ
遺品整理から形見分けまでの一般的な流れを説明します。相続や贈与といった法律に関係しないものでは決まりはありませんので、故人様の意志を第一にするとよろしいでしょう。
遺言状があるか確認
まず第一に遺言状があるのかを確認します。その有無により現金などをはじめとする遺品の受取人も決まることがあるためです。
遺言状がでてきた場合は勝手に開けてはいけません。家庭裁判所に提出し、検認を受ける必要があります。内容を相続人全員に伝え、加筆・削除などの偽装がされないようにするため必要になります。
- 遺言状が複数でてきた場合は日付の新しいものが優先されます。
- 「公正証書遺言」という公証役場で作成したものとはっきりわかる場合は開封しても問題なく、検認の必要もありません。
- 検認が必要なものを勝手に開封すると5万円以下の過料の可能性があります。
判断がつかない場合は開封せずに検認を受けると安心でしょう。
誰が作業をする?
遺品整理は業者に頼む方法と、自分たちで作業をする方法があります。どちらで実施するかは自由になります。遺品の量やスケジュールなどの都合にあわせるとよろしいでしょう。
業者に頼む
業者に依頼する理由としては、遺品の量が多い・高齢で難しい・距離や日程の関係で自分たちだけでは対応が難しいなどがあります。近年増えている理由としては、賃貸など独居で亡くなった場合に家の引渡(退去)の期限があることです。
立ち合いが必要かどうかは確認が必要です。大切な故人様の遺品整理になり、確認が必要な遺品もでてくる可能性があります。できる限り立ち合いをするとよろしいでしょう。
業者を選ぶ際には、なにが対応できるのかを念頭にするとよろしいでしょう。また遺品整理士という資格もあります。そうしたスタッフがいるとより大切に遺品を扱ってもらえるでしょう。
- 一般廃棄物収集運搬業許可…不用品の処分に必要になります(不法投棄を防げます)。
- 古物商許可…家財の買取に必要になります。
- 訪問見積の有無…正確な見積をとると安心です。
- 書面での見積提示…明確な見積がないと当日の追加請求が発生する可能性があります。
- 丁寧な対応…問合せに対して丁寧ですと遺品の整理への対応も安心できるでしょう。
- 特殊清掃…部屋が汚れてしまっている場合に対応が必要です。
プランにハウスクリーニングがある場合もあります。独居で亡くなると発見まで時間がかかる可能性があります。賃貸では汚れがあった際には現状復元が求められます。その場合には素人の作業では対応しきれないため、業者への依頼がよいでしょう。 事前の見積をとる、不法投棄の心配がないなど慎重に業者選びをしましょう。
自分で作業をする
大切な故人様の品物になりますので、ご家族の手で整理をするのが一番でしょう。
時間に余裕があると想い出話に花が咲き、なかなか作業がおわらない可能性があります。何時間または何日間で実施するのかを事前に計画をたてましょう。
夏場・冬場など厳しい環境もあります。お悔みがあった後は、心身ともに疲れがたまっているものです。普段よりもこまめな休憩・水分補給をとりましょう。
遺品は4つにわける
整理のポイントは「貴重品」「形見」「リサイクル」「処分」にわけることです。
貴金属などは1点での時価の資産価値が高い(5万円以上)場合、相続財産となりえます。鑑定後に専門家への相談がよろしいでしょう。
貴重品
通帳・クレジットカード・土地や不動産の書類・パスポート・年金手帳・健康保険証・有価証券・宝石や骨とう品、美術品 など
たんす貯金やお仏壇の引き出しなど思いもよらない所にしまってあるかもしれません。注意して探す必要があるでしょう。
- 勤務先の名札、携帯電話など返却の必要があるものは会社に問い合わせましょう。
- 自営業だった場合、確定申告など税金上の問題があるので、少なくとも5年間は書類の保管が必要です。
手帳や住所録、日記、手紙類は後で必要となることがあるので、1か所にまとめて2〜3年の間、保管しておきましょう。喪中欠礼のお知らせの宛先など、故人様の関係者への連絡の参考になります。
形見
アルバム(写真)・時計・万年筆・服(着物・帯など)・アクセサリー・コレクション など
なにを形見とするかは決まりはありません。故人様の愛用品や思い出の品を選ばれることが多いようです。
故人様の愛用の服・ネクタイなどでお仏壇で使敷物やおリン布団をつくる方もあります。
リサイクル
冷蔵庫・テレビ・洗濯機・パソコン・電話などの電化製品、ベッド・タンスなどの家具・食器など・衣類 など
- 遺品整理業者で回収までプランにいれていることもあります。リサイクル業者で無料または回収費をかけて回収する場合もあります。
- 団体や施設への寄付として贈ることも可能です。対象の団体があるか確認が必要です。
処分
燃えるごみ・燃えないごみ・粗大ごみ など
- 各自治体の分別方法・回収方法を確認しましょう。
- 自宅医療での注射器などは指定された方法での処分になりますので、注意しましょう。
デジタル遺品とは
デジタル・IT化が進む中、注意が必要なのがデジタル遺品です。スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器には個人情報がはいっています。処分の際には個人情報を完全に消去してからにしましょう。消去できないまま買取に出すと個人情報流出の恐れがあります。難しい場合は買取業者で消去もしているか確認をしましょう。
注意点とよくある疑問
形見分けをする際の注意点を説明します。明確な決まりはありませんが、中には気にされる方もいますので注意しましょう。
形見分けをしなくてもいい?
形見分けをしなくてはいけない決まりはありません。近年では核家族化や生活習慣の変化、葬儀や法要の小規模化にもより、おこなわれない家庭もあります。喪主のご家庭で、偲ぶものを残す程度でも問題ないでしょう。
しかし習慣として形見分けはあるもの、と認識している方もいます。形見分けの声があった際には、どうするか検討または喪主家庭でのみおこなったことをお伝えするとよろしいでしょう。
誰に渡す?
形見分けは、目上の人から下の人に渡すものです。よって目上の人へお渡しはしないのが習慣です。中には親しいなどの理由で形見分け検討することもあるでしょう。その際には「ご無礼かと存じますが」と一言お伝えして渡すのが丁寧でしょう。
どう渡す?
きれいにして汚れがないように、また壊れてないものを渡します。アクセサリーなどはデザインをかえるなどリメイクもいいでしょう。
ラッピングのように包むことはせず、品物はそのまま渡しますのが一般的です。包む場合でも半紙などで簡易にすることが多いようです。
なるべく手渡しにします。難しい場合は先方と相談の上、宅配便などで配送します。
形見はどこにしまう?
お仏壇や戸棚の引き出しにしまう、机やチェストに飾るのもよろしいでしょう。アクセサリーや小物であれば身に着けることもできます。
近年では形見の指輪をお位牌に収納したり、お仏壇でお仏具と一緒に飾ることもされています。
保管方法に決まりはありません。大切にすること、故人様を偲ぶ気持ちが一番です。
台座の部分に指輪を入れることが可能なお位牌です。組み立て式になっているため、指輪を取り出すこともできます。また付属の板を付けることで指輪を見えないようにすることも可能になります。
加工にお時間がかかりますので余裕をもっての依頼がおすすめです。
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スタンドとベースをセットすることで場所を問わずお飾りができます。
写真や腕時計など故人様にゆかりのある品物で飾ることでこだわりの祈りの空間ができあがります。
材質違いでウォールナットのセットもあります。
実家の仏壇はどうする?
お仏壇はご先祖様を祀る場所です。また、新たに故人様のお位牌(または過去帳)も加わります。可能な限り引き継ぎましょう。
住環境により大きなサイズが難しい場合はコンパクトなお仏壇に、伝統的なデザインがお部屋にはあわない場合はモダンなお仏壇に買替えもできます。
お仏壇の処分について詳しくはこちら
お仏壇処分を検討している方に、その方法や費用、注意点をお仏壇のはせがわが解説します。
お墓はどうする?
お仏壇同様に、可能な限り引き継ぎましょう。
遠方になってしまうなどの場合は、墓じまいとお骨の引越しをおこない、お参りのしやすい墓地を求めるとよろしいでしょう。
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生き物(ペット)も形見分け?
故人様が大切にされていたペットを譲りうけることは問題ありません。しかし、ひとつの命になりますので、大切にしてくれる人へ譲る必要があります。育てられる環境か、また先方が望んでいるかどうかもよく確認しましょう。
ペットも形見分けする?
ペットも大切な家族と考えられています。人間同様に明確な決まりはありません。ペットが亡くなった際に形見分けをするかどうかはご家族で相談をするとよろしいでしょう。実家のペットが亡くなり、家をでたお子さんが形見分けを望むケースも多くあります。写真や小物以外にも、遺骨や毛をケースにいれてわけることもあります。
ペットの遺品を募集している団体もあります。対象品は施設ごとにかわりますが、寄付をするのもいいでしょう。
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生前に形見分けをする
終活の一環として生前に形見分けをすることもあります。金額が大きい場合は贈与税がかかる可能性もありますので注意しましょう。
ほかにはエンディングノートや遺言状を作成し、家族に自分の考えを伝えることが大切です。可能であれば普段から、何があるのか・どうしたいのかといった会話や相談が家族できるとよろしいでしょう。
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