おはぎをお彼岸に食べる意味・ぼたもちとの違い
お彼岸には、おはぎ・ぼたもちをお仏壇にお供えし、その後に「お下がり」として家族揃っていただくのが定番です。一般的に、3月の春彼岸には「ぼたもち」、9月の秋彼岸には「おはぎ」をお供えするのが基本です。
この項目では、お彼岸におはぎを食べる理由や、おはぎとぼたもちの具体的な違いについて解説いたします。
そもそも「お彼岸」って何?
お彼岸は、年2回行われる日本独自の風習で、それぞれ「春分の日」「秋分の日」を中日(ちゅうにち)とした7日間が、春彼岸(3月)・秋彼岸(9月)として定められています。
あの世(彼岸)とこの世(此岸)の距離が最も近くなるとされており、ご先祖様への感謝の気持ちを込めて、お墓掃除・お参り、お仏壇のお供え・お参りなどの先祖供養を行う時期として位置付けられています。また、先祖供養を通じて「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる仏教修行の実践も推奨されています。
■お彼岸について詳しくはこちら
お彼岸とは、春(3月)と秋(9月)の年2回に行われる仏教行事です。このページでは、お彼岸の意味や具体的なお彼岸日程、4つのやるべきことなど、お彼岸の基本を解説しています。
なぜお彼岸におはぎを食べるの?
お彼岸には、おはぎやぼたもちといった小豆を使ったお菓子を食べる習慣があり、家族全員でいただくことで家族円満を願うものといわれていますが、これには具体的な理由があります。諸説ありますが、以下に2つの説をご紹介いたします。
小豆を用いた邪気払いのため
古くから、中国をはじめ日本などの東アジアの国では、小豆の持つ赤色は太陽や火、血などの「生命」を象徴する色とされており、邪気を払う「陽」の力を持つ神聖な食材と考えられてきました。
このように、小豆を先祖代々の霊にお供えすることで、災いを防いで邪気を払うためという説があります。そのほか邪気払いの効果によって、成仏できていない霊の魂も鎮めようとしたという考えもあります。
中国最古の薬物書には、小豆の煮汁が解毒剤として使われた旨が記されており、日本でも小豆は薬として用いられてきました。栄養豊富な小豆を摂取することで、実際に疲労回復などの効果が見られることも、魔除けの力があると考えられてきた理由の一つと言えるでしょう。
現代においても、自宅までお参りに来てくださった親族や知人へのおもてなしとして、ご親族へ疲れを取っていただくためのお茶菓子としてお出しするのもおすすめです。
甘味をお供えしてご先祖様へ感謝を伝えるため
砂糖は奈良時代に中国から日本に伝わったと言われていますが、当時はなかなか手に入らない貴重品とされており、一部の上流階級の人々の間で薬として扱われていました。砂糖が一般庶民にも流通したのは明治時代になってからといわれています。
このように、昔は貴重品だった砂糖を使った食べ物をお供えすることで、ご先祖様への敬意や感謝の気持ちを伝えるためという説もあります。
おはぎとぼたもちの違い
「『おはぎ』も『ぼたもち』もお彼岸の定番品だけど、具体的に何の違いがあるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?実は、この2つはどちらももち米とあんこを使用した和菓子であり、基本的には同じ食べ物なのです。
近年は、おはぎとぼたもちを区別することも減り、どちらも「おはぎ」の名称で呼ばれることも増えていますが、本来は、おはぎとぼたもちは季節によって呼び方が区別されており、また作り方と形にも一部違いが見られます。以下にて、簡単に解説いたします。
呼び方
季節によって呼び方が異なり、3月の春彼岸では春に咲く牡丹(ぼたん)の花にちなんで「ぼたもち(牡丹餅)」、9月の秋彼岸では秋に咲く萩(はぎ)の花にちなんで「おはぎ(御萩)」と呼ばれています。
このように、季節ごとに咲く美しい花に例えた食べ物をお供えすることで、ご先祖様に感謝の気持ちを表していると考えられています。
作り方・形
諸説ありますが、おはぎとぼたもちは、作り方と形にも若干の違いがあるとされています。
「ぼたもち」は、大輪を咲かせる牡丹の花に見立てて、丸く大きめに「こしあん」で作ります。もう一方の「おはぎ」は、萩の花に見立てて小振りな俵型にし、小さな花びら1枚1枚を模して「粒あん」で作ります。
おはぎ・ぼたもちの作り方について詳しくは、<こちら>の項目をご参照ください。
おはぎは、いつ供えていつ食べるべき?
お彼岸の期間は合計7日間ありますが、おはぎ・ぼたもちは生ものであるため、どのタイミングでお供えすればいいのかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、おはぎ・ぼたもちをいつお供えしていつ食べればいいのか、具体的に解説します。また、お供えをいただく行為である「お下がり」が持つ意味についても触れています。
おはぎのお供えタイミング・方法
おはぎ・ぼたもちはお彼岸の行事食ですので、基本的には、お彼岸期間中であればいつお供えしていつ食べても構いません。
ただし、おはぎは生ものになりますので、もしお彼岸の期間中でどこか1日だけお供えするという場合には、お彼岸の中日である「春分の日」「秋分の日」がおすすめです。
お彼岸の中日は昼と夜がほぼ同じ長さになることから、1年の中でこの世とお浄土との距離が最も近くなり、思いが通じやすくなる時と考えられていました。
よって、7日間あるうちのお彼岸期間のうち、中日は特に力を入れて先祖供養を行うべきタイミングと言われています。
2024年のお彼岸日程・中日はいつ?
春と秋のお彼岸は、中日である「春分の日」「秋分の日」を中心に決められています。例年、春分の日は3月20日~21日ごろ、秋分の日は9月22日~23日ごろになる場合が多く見られますが、日程は毎年異なります。これは、お彼岸の中日が、毎年太陽の動きに合わせて国立天文台によって定められていることが理由です。
2024年の秋彼岸・2025年の春彼岸日程とそれぞれの中日は、それぞれ以下の通りです。
■2024年(令和6年)秋のお彼岸日程
2024年(令和6年)の秋彼岸は、【9月19日(木)から9月25日(水)】までの7日間です。
- 9月19日(木)…秋彼岸入り(初日)
- 9月22日(日・祝)…中日(秋分の日)
- 9月25日(水)…秋彼岸明け(最終日)
■2025年(令和7年)春のお彼岸日程
2025年(令和7年)の春彼岸は、【3月17日(月)~3月23日(日)】までの7日間です。
- 3月17日(月)…春彼岸入り(初日)
- 3月20日(木・祝) …中日(春分の日)
- 3月23日(日)…春彼岸明け(最終日)
お供えしたおはぎは「お下がり」としていただく
お彼岸のお供えであるおはぎ・ぼたもちをはじめ、お仏壇にお供えした食べ物は、粗末にせずに家族皆でいただくのがマナーです。
一度お供えしたものを自分たちが食べるのは失礼なのではと不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、仏教の世界では、お供えをいただくことは「お下がり」といい、一度仏様にお渡ししたものをいただくことで、仏様への感謝や今生きていることのありがたみを感じることができる大切な行為だとされています。
また、お参りに来られたお客様やご親族に分けたり、お土産としてお渡したりする形で対応しても問題はありません。
一般的には、一度仏前にお供えした後はしばらく置いておく形が一般的ですが、おはぎ・ぼたもちは傷みやすいため、直射日光や高温多湿な環境は避け、長くとも半日~1日を目安に下げると安心です。
もし沢山ある場合には、すぐ食べるならばラップをかけて冷蔵保存、長期保存の場合は冷凍保存すると良いでしょう。
おはぎのお供えの仕方
お仏壇にお供えする際は、「高杯(たかつき)」や「盛器(もりき)」といったお供え用の器(足が高くなっており、仏様への敬意を表すことができるもの)を使ってお供えします。個包装のお菓子などであれば直接置いても構いませんが、おはぎ・ぼたもちの場合は、三角に折った半紙を敷いた上に置くと安心です。
置く場所については、お仏壇の下段か、お仏壇の前に「供物机(くもつづくえ)」を用意した上に一対で置くのが基本です(盛器の場合は1つで問題ありません)。
おはぎの作り方は?レシピを紹介
この項目では、おはぎ・ぼたもちの基本的な作り方を流れに沿ってご説明します。また、「おはぎを実際に作るのは難しいけど、形だけでもお供えしたい…」という方に向けて、イミテーションのおはぎもご紹介いたします。
おはぎの基本レシピ
ぼたもちは、牡丹の花のように大きめに「こしあん」で作り、おはぎは萩の花のように小振りに「粒あん」で作る形が一般的です。
基本的な作り方は同じで、もち米にうるち米(普通のお米)を混ぜたものを炊き、すりこぎで軽くつぶしたものを丸め、あんこで包んで作ります。以下に、おはぎの基本レシピをご紹介いたします。
■材料(4人前)
粒あん(こしあん)…適量 もち米…2カップ うるち米…1カップ
1.もち米とうるち米は合わせてとぎ、3カップ弱の水加減で普通に炊きます。
2.炊きたての熱いご飯を軽く混ぜ、水で濡らしたすりこぎで軽く突いてつぶします。
3.熱いうちに小さな俵形に丸めます。
4.ぬれ布巾をかたく絞ってあんを置き、ご飯をのせてあんをのばしながら包みます。
5.お皿に盛り付けたらできあがりです。
- 小豆を一から煮てあんこ玉を作るのが難しい場合には、市販のゆであずき缶を使用すると便利です。
- もち米はうるち米に比べて芯が残りやすいため、浸水時間を長めに取る必要がありますが、一晩水に浸けると水を吸いすぎてしまうため、数時間程度で問題ありません。
イミテーションのおはぎもおすすめ
「実際に作るのは難しいけど、形だけでもお供えしたい」という方向けに、おはぎをかたどったイミテーションのお供え菓子もおすすめです。
本物そっくりな質感のものや、お仏壇のお供えにもぴったりなローソクタイプのものもございます。
お彼岸の食べ物|おはぎ以外には何を食べる?
お彼岸時期の食べ物や料理は、おはぎ以外にも様々な定番品がございます。この項目では、お仏壇にお供えする定番のお供えをはじめ、お彼岸時期に食べる定番料理などを一式ご紹介します。
おはぎ以外で定番の食べ物のお供え
おはぎ以外で定番のお彼岸のお供えは、主に以下の通りです。
お彼岸団子
一部地域では、お彼岸時期に「お彼岸団子」と呼ばれるお団子をお供えする風習があります。
お彼岸の初日(彼岸入り)に供える団子を「入り団子」、最終日(彼岸明け)に供える団子を「明け団子」と呼びます。一般的には白く丸めたお団子を積み重ねてお供えしますが、地域によって形や積み方に違いが見られます。
精進料理
仏教では殺生を禁じているため、お彼岸・お盆などの特別なタイミングでは、肉や魚介類を使わずに作られた「精進料理」のお供えが定番です。
また、精進料理をお供えする際には、「御霊供膳(おりょうぐぜん・おりくぜん)」と呼ばれるお膳を使用するのが丁寧な形です。
フリーズドライ製の精進料理もおすすめ
「精進料理を準備するのはかなり大変だけど、ご先祖様にはしっかりとお供えをしたい」という方には、フリーズドライ製の精進料理セットがおすすめです。
動物性の物は避け、昆布だしを使用するなど、伝統に基づいてお供えしていただけます。お湯をかけるだけ・レンジや鍋で加熱するだけで簡単に出来上がります。※白飯は別途ご用意が必要です。
季節の果物
お彼岸には、お仏壇を華やかに彩る季節の果物もお供えの定番品です。長時間のお供えでも問題ないよう、リンゴやオレンジ、メロンなどの日持ちする種類の果物がおすすめです。
果物をお備えする場合も、「高杯」や「盛器」といったお供え用の器を使用してお供えします。
故人様の好きだったもの
故人様が生前好きだったお菓子(菓子折り)や飲み物をお供えするのも通例です。果物と同様に、高杯や盛器に載せて仏壇にお供えします。
仏教の教えにのっとり、お酒や肉魚などの殺生を連想させるものは避けて選ぶのが基本ですが、近年はお寿司やお酒などをかたどったローソクタイプのもの(「故人の好物ローソク」シリーズ)を代わりにお供えする方も増えています。
落雁(らくがん)
砂糖とでんぷんを含む穀粉(米や大豆など)で作られた砂糖菓子「落雁(らくがん)」も、お彼岸をはじめ、お盆にもよくお供え物として用いられます。
蓮や菊の花の形をしたものが多く、淡い色合いが特徴です。水分量の少ない干菓子のため、傷みづらく日持ちします。リアルな質感のイミテーションの落雁もおすすめです。
お赤飯・小豆めし
おはぎ・ぼたもちと同様に、小豆を使った料理であるお赤飯や小豆めしも、邪気払いの役割として定着したお彼岸の定番料理です。
還暦祝いや七五三などといった慶事でお赤飯を食べるのも、同様の理由です。
彼岸そば・彼岸うどん
お彼岸の期間には、おそばやうどんを食べる地域があり、「彼岸そば」「彼岸うどん」と呼ばれています。
「年越しそば」や「運ドン」など「そば」や「うどん」は縁起が良いとされたり、弱った胃腸を整え、内臓をきれいにする食べ物とも言われています。
天ぷら(精進揚げ)
魚や肉などを避け、野菜やキノコ類を揚げた天ぷら(精進揚げ・しょうじんあげ)も、お彼岸の定番です。
春彼岸にはタラの芽やタケノコ、秋彼岸にはきのこやナスなど季節の食材を使うといいでしょう。
いなり寿司・五目寿司
いなり寿司や五目寿司などのお寿司も、お彼岸の代表的な食べ物の1つです。
肉や魚を使わず、山菜やレンコンの酢漬けなどを使用して作ります。
煮物(煮しめ)
お彼岸期間中に毎回違う精進料理を作るのは大変なため、日持ちする野菜を使って煮物を作っておくと便利です。
定番の煮物としては、鶏肉の代わりに車麩や豆腐を使った煮物のほか、春彼岸ならタケノコ、秋彼岸なら里芋など季節の素材を使った煮物が定番です。
汁物
精進料理や和食では、「一汁三菜」や「一汁一菜」と言うように汁物を重要視します。
こちらも肉や魚を使わないけんちん汁・きのこ汁、だいこんの味噌汁などが代表的です。
■お彼岸の食べ物について詳しくはこちら
お彼岸の会食におすすめのお料理について解説したページです。また、お供えやご親族にもおすすめな食べ物もご紹介しています。
食べ物以外で定番のお供え
お仏壇には、食べ物以外にも様々なお供えを行います。仏様に対するお供えの基本は「香・花・浄水・灯燭(とうしょく)・飲食(おんじき)」の5種類とされており、総称して「五供(ごく)」と呼ばれます。
現代においては、「お線香・お花・お水・ローソク・食べ物」の5つにあたります。五供は通常のお参りにおいてもお供えするものになりますが、お彼岸は1年に2回しかない特別なタイミングになりますので、いつもより盛大に季節の花をお供えして差し上げると良いでしょう。
よくある質問
最後に、お彼岸時期の定番品であるおはぎ・ぼたもちに関してよくある質問を、ピックアップしてご紹介いたします。
Q1.おはぎは、絶対に作らないとダメ?買ったものでもいいの?
おはぎは、絶対に手作りしなければならないというきまりはありませんので、スーパー等で販売されているものを購入してお供えいただいても問題ございません。
大切なのは、ご先祖様に対する感謝の気持ちになりますので、自分のできる範囲で無理せずご用意いただくと良いでしょう。
Q2.おはぎやぼたもちは、仏壇だけでなくお墓にもお供えしてもいいの?
おはぎ・ぼたもちをはじめ、お菓子や飲み物といった仏様へのお供え物は、お仏壇と同様にお墓にもお供えいただき問題ございません。
お供え物は直接置いたりせず、半紙などを敷いて墓前の空いたところにお供えするのが丁寧な形です。お供え物の飲み物をお墓に直接かけるのは、墓石が傷む原因になりますので避けましょう。
また、カラスなどに荒らされてしまう可能性がありますので、お参りが終わったらお花以外のお供え物は基本的に持ち帰りましょう。
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お彼岸とは、春(3月)と秋(9月)の年2回に行われる仏教行事です。このページでは、お彼岸の意味や具体的なお彼岸日程、4つのやるべきことなど、お彼岸の基本を解説しています。
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