お墓じまい費用の総額・内訳は平均いくら?地域によって違いはある?
お墓じまい費用の総額は、平均するとおよそ30万円~300万円程度です。
墓石を撤去するだけであれば20万円程度で可能ですが、取り出したご遺骨を放置や廃棄することは法律によって禁止されています。よって、行政手続きを行い、新たな納骨先にご遺骨を納めるまでを含めてお墓じまいの費用と言えるでしょう。
費用相場に大きく幅があるのは、地域ごとの相場の違いという訳ではありません。閉眼供養を依頼するお寺にお布施をいくら包むかや、新たな納骨先の価格がどの程度かなど、置かれた状況や選択肢によって大きく違いが出ることが主な理由です。
実際にかかる費用の内訳は、大きく分けて「お墓の撤去に関する費用」「行政手続きに関する費用」「新しい納骨先に関する費用」の3つです。
まずは、具体的な内訳をそれぞれ解説いたします。
お墓の撤去に関する費用
お墓の撤去に関する費用には、一般的に以下の3項目が含まれます。撤去の際には、工事費だけでなく、ご遺骨を取り出すにあたっての法要のほか、場合によっては檀家を離れるための費用も発生します。
- お墓の撤去費用:20万円程度~
- お寺へのお布施代:3万円~10万円程度
- 離檀料(りだんりょう):無料~20万円程度
【総額目安:23万円~50万円程度】
・お墓の撤去費用
墓石を撤去・処分して区画を更地にするにあたり、石材店に依頼する際の工事費用を指します。1㎡あたり10万円〜15万円程度の費用がかかります。ご遺骨の取り出しも一緒に依頼する場合には、別途3万円~5万円程度の追加費用が発生します。
・お寺へのお布施代
お墓の撤去前に執り行う法要を寺院に依頼した際の、お礼費用を指します。ご遺骨を取り出す際には、現在お墓に入っている魂を抜くために「閉眼供養(へいがんくよう)」という儀式を行う必要があります。お布施代は、基本的には普段の法要と同額程度で問題ないとされていますが、お寺によって異なる場合もございます。
・離檀料(りだんりょう)
お墓が寺院にある場合にのみ発生する、檀家を離れるために寺院へ支払う費用を指します。地域性やお寺のお考えによっても異なりますが、通常の法要などでお包みする額の2~3倍程度が目安とされています。 法律で定められた費用ではありませんが、今までお世話になった感謝の気持ちとしてお渡しするのが通例です。
どんな場合にお墓の撤去工事が高額になる?
今あるお墓が以下のような状況の場合には、記載した目安よりも割高になることもあります。石材店によって価格設定は異なりますので、一社で決めず、複数の石材店から見積りを取って比較検討いただくことをおすすめします。
- 施設の通路が狭く、お墓がある場所までの重機の侵入が厳しい場合
- お墓が山奥にあるなど、工事に手間がかかる場合
- 一区画に沢山の石碑が並んでおり、複数の墓石を撤去する必要がある場合
行政手続きに関する費用
行政手続きに関する費用には、主に以下の1項目のみとなります。
- 行政手続きに必要な書類の手配料:数百円~1,500円程度
総額目安:数百円~1,500円程度】
・行政手続きに必要な書類の手数料
墓じまいの行政手続きに必要な書類を、自治体や霊園に発行依頼する際にかかる費用のことを指します。発行元によって金額は異なりますが、いずれも費用は少額です。なお、実際に必要な書類は以下の3つとなります。
- 埋蔵証明書(埋葬証明書)…今のお墓から取得
- 受入証明書…新しい納骨先から取得
- 改葬許可証…埋蔵証明書と受け入れ証明書を提出の上、自治体から取得
新しい納骨先(改葬先)に関する費用
新しい納骨先(改葬先)に関する費用には、以下の2項目が含まれます。納骨先によっては、用意費用にお布施代(法要代)も含まれている場合もございます。
- 新しい納骨先の用意費用:5万円~250万円程度
- お寺へのお布施代:3万円~10万円程度
【総額目安:8万円~260万円程度】
・新しい納骨先の用意費用
新しい納骨先を用意する際にかかる費用全般を指します。冒頭で説明した通り、取り出したご遺骨を勝手に廃棄したりすることはできないため、お墓じまいする場合であっても新たに納骨先が必要になります。
・お寺へのお布施費用
改葬先の納骨法要を寺院に依頼した際の、お礼費用を指します。ご遺骨を取り出す際に一度魂抜きをしているため、改めて「開眼供養(かいげんくよう)」という魂入れの儀式を行う必要があります。
■一般的に選ばれる納骨先6選
どの納骨先や納骨方法を選ぶかによって、費用は大きく前後します。一般的によく選ばれる納骨先は以下になります。それぞれの具体的な特徴は、こちらの項目をご参照ください。
- 一般墓所(80万円~250万円程度)
- 永代供養墓(5万円~150万円程度)
- 樹木葬(20万円~80万円程度)
- 納骨堂(10万円~150万円程度)
- 散骨(5万円~70万円程度)
- 手元供養(数百円~50万円程度)
費用は誰が払うべき?法的な決まりはあるの?
上記で解説した通り、お墓じまいは、場合によってかなり高額な費用が発生するため、トラブルの元になりやすい傾向にあります。あとから問題にならないためにも、事前に家族や親族間で話し合いを行うことが大切です。
結論、お墓じまい費用はお墓の承継者が支払いを負担する形が一般的です。しかしこれは絶対的な決まりではなく、実際には、兄弟や親族などの複数名で分け合って負担する場合も多く見られます。
ここでは、お墓じまいの負担者について解説します。
①お墓の承継者が支払う場合
支払い負担者としてまず一般的なのは、お墓の承継者です。理由としては、お墓の管理ができるのがお墓の所有権を持つ承継者のみであることから、お墓に関する費用もあわせて負担する場合が多いためです。
なお、お墓の承継者の取り決めについては、「民法897条(祭祀に関する権利の承継)」に、「承継者の指定がある場合は指定を受けた方が承継者となり、指定がない場合は慣習に従って決定する」といった内容が記載されています。一般的には一家の長男または長女が承継者に指定される場合が多く、お墓じまいの費用も同様に長男長女が負担するケースが多く見られます。
②お墓の承継者+血縁者が支払う場合
お墓じまいは、場合によってはかなり高額になるため、お墓の承継者が単独で負担するのではなく、兄弟や親族などの血縁者で協力して支払う場合が多いのが現状です。
支払いの割合に特段の決まりはなく、協力者間で相談して決める必要があります。費用支払いはのちのちトラブルが起こりやすい案件のため、全員が納得するまできっちり話し合うことが大切です。
③故人様が支払う場合
中には、終活の一環として、故人様が生前にお墓の撤去費用をご準備されている場合もあります。まだ多くはない事例ではありますが、念のために遺言や貯金などを確認されると安心です。
費用が払えない場合はどうしたらいい?放置したらとどうなる?
ここまで見てきた通り、お墓じまいを行う際には、場合によってはかなりの費用が発生するため、中にはご事情があって費用を払いきれないという方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、お墓じまいの費用が払えない場合どうすべきか、4つの対処方法をご紹介します。また、お墓じまいをせずに放置してしまった場合どうなるかについてもあわせてご紹介します。
①家族や親族に相談して協力してもらう
前項でも説明した通り、お墓じまいの費用は絶対に一人で負担しなければならないという訳ではありません。ですので、もし一人で抱え込んでしまっている場合には、まずは家族や親族に相談して、協力してもらえないか依頼してみるとよいでしょう。
②宗教法人(管理元の寺院)に相談する
現在のお墓がお寺にある場合は、寺院の住職にも相談されるといいでしょう。素直にご事情をお話することで、お墓じまいに必要な費用を考慮してくださる場合もあります。
③自治体に相談して補助金制度を利用する
まだ事例として多くはありませんが、お墓の管理者がいないまま放置されてしまう「無縁仏」の増加問題を背景に、自治体によってはお墓じまい(お墓の撤去)に対して補助金制度を設けている場合もございます。
また、補助金とまではいかずとも、お墓じまいのサポートを行っている自治体もあるようです。もしも周囲からの援助が難しい場合には、お墓の所在地域の自治体にご相談してみてはいかがでしょうか。
④メモリアルローンを利用する
銀行によっては、お墓や葬儀に関する費用に対して「メモリアルローン」を用意している場合もあります。新しくお墓を建てる場合がメインではありますが、審査が通ればお墓じまいに対してもローンを使用することができます。
お墓じまいをせずに放置してしまった場合はどうなる?
近年、承継者不在などの理由により、管理費が支払われず放置されてしまう「無縁仏(むえんぼとけ)」が増加しています。
お墓が放置されたまま連絡が付かない場合は、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、墓地(施設)管理者の意向でお墓を撤去できるようになります。その場合、取り出したご遺骨は合祀墓(ごうしぼ)に埋葬する形が一般的です。
「合祀(ごうし)」とは、不特定多数の方のご遺骨を一か所にまとめて供養する方法です。一度合祀されてしまったご遺骨は取り出すことができませんので、後悔することのないよう、お墓の放置はせず、お墓の承継が負担になってしまう場合には早めにお墓じまいを行いましょう。
費用を安く抑える方法はある?
「なるべくなら、お墓じまいには費用をかけずに安く済ませたい」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
結論、冒頭で紹介した3つの内訳のうち、具体的に費用が抑えられるのは「お墓の撤去に関する費用」「新しい納骨先に関する費用」の2つです。
ここでは、お墓じまいの費用総額を抑えるにはどうすればいいのか、節減可能な費用をご紹介します。
①墓石撤去費用のうち、工事費を抑える
工事費は、石材店によって設定方法が異なるため、場合によっては必要以上に高額な費用を請求されてしまうケースも見られます。複数の石材店から見積りを取得し、比較検討することで無駄なお金を掛けずにお墓じまいすることができます。
なお、撤去後の墓石は「産業廃棄物」扱いとなり、廃棄にあたっては各都道府県での許認可が必要です。不法投棄されてしまうことがないように、見積り価格の安さだけで選ばず、きちんと許認可を取得している石材店に依頼するのが安心です。
②新規納骨先の費用のうち、用意費用を抑える
冒頭でも説明しましたが、ご遺骨を取り出した後どこに納骨するかによって費用は大きく異なります。大きく費用が抑えられるのは、合祀タイプの永代供養墓や散骨を選んだ場合で、一般墓所の用意が平均80万円以上はかかるのに対し、合祀墓や散骨は平均5万円程度から用意が可能です。
ただし、他の方との共同埋葬になったり正確な納骨場所が分からなくなるなどのデメリットもあり、お墓じまいを行う当事者はよくとも、のちのちの世代の方が悲しむケースも見られます。最終的にどこを選ぶかは、ご家族の中で十分に話し合いを行うべきでしょう。
【一覧】一般的に選ばれる6つの納骨先と、その費用相場
以下に、一般的によく選ばれる6つの納骨先を簡単にご紹介します。ご家族間での話し合いの際にご参照ください。
1.一般墓所
墓石を建て、その下にご遺骨を納める形の一般的なお墓を指します。今までと同じように個々のスペースでゆったりしたお参りが可能ですが、年間管理費などが別途発生します。
※遠方のお墓の管理が大変という理由でお墓じまいを行う場合には、近隣にお墓を建て直して「お墓のお引越し」という形で再度納骨を行う方もいらっしゃいます。
【費用相場:80万円~250万円程度】
2.永代供養
寺院や霊園が、遺族の代わってご遺骨を管理・供養する形のお墓を指します。
比較的費用を抑えて用意できますが、合祀か個別納骨かによって費用が大きく異なります。最初に供養料を支払えば、その後の管理料は発生しない形が基本です。
【費用相場:5万円~150万円程度】
3.樹木葬
ご遺骨をシンボルツリーや草花の周辺に埋葬する形のお墓を指します。
個人用か家族用かなどによって価格が異なりますが、比較的費用を抑えて用意できます。納骨箇所を指定できない場合が多く、また一度納骨すると取り出せない形が一般的です。
【費用相場:20万円~80万円程度】
4.納骨堂
主に屋内にある、ご遺骨を納めるためのスペースが設けられた施設(お墓)を指します。
様々な施設形態があるため、予算に応じて選択することが出来ます。一般墓所と同様に年間管理費が発生しますが、駅近などアクセス良好な立地が多く、屋内タイプの場合は天候を気にせず快適なお参りが可能です。
【費用相場:10万円~150万円程度】
5.散骨
ご遺骨を粉状に加工して、海や野山に撒く埋葬方法を指します。比較的費用を抑えて供養ができ、供養後の維持費用も発生しません。
一方で、手元にご遺骨が残らない、ご遺骨を砕いて加工する必要があるなどのデメリットも見られ、供養方法の中でも特に注意が必要なケースになります。
【費用相場:5万円~70万円程度】
6.手元供養
ご遺骨の一部または全部を小さな骨壺やアクセサリーに納め、手元で保管する供養方法を指します。アクセサリー選びによって価格は大きく異なります。
故人様の存在を近くに感じることができる供養として近年人気がありますが、将来的にご遺骨の扱いに困るケースも多く、家族と事前の話し合いが必要です。
【費用相場:数百円~50万円程度】
手元供養商品
【どちらがお得?】今あるお墓を維持した場合との費用比較
ここまで、お墓じまいの費用について詳しく説明してきましたが、まだ決定打がなく、お墓じまいをするべきか否かでお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
最後に、お墓じまいをした場合と今あるお墓を守り続けていく場合の双方の視点から、具体的な費用比較をご紹介します。
今あるお墓を維持した場合にかかる費用
一般墓所の維持には、一般的に以下3つの費用が発生します。1年の維持費総額は、7千円~13万円程度が目安です。
-
管理費 【費用相場:5千円~1万円程度(年1回 )】
墓地(施設)の共益部分を維持管理するための費用。 -
お墓参り費用 【費用相場:2千円~10万円程度(年1回~)】
遠方の場合は、家族で泊りがけで行くとなると数十万円かかるケースもある。年に何回お参りに行くかにもよって異なる。 -
メンテナンス費用 【費用相場:無料~2万円程度(不定期)】
墓石の定期クリーニングなどのメンテナンス費用。業者に依頼する場合は有料となる。
お墓じまいをした場合との費用比較
それでは、実際にお墓じまいをした場合と比べてどのくらい費用が異なるのか、30年間一般墓所を維持し続けた場合(50歳で親からお墓を引継ぎ、80歳で子に承継)を例に比較してみます。
■30年間お墓を維持し続けた場合の目安:総額20万円~390万円程度
- 管理費:15万円~30万円程度
- お墓参り:6万円~300万円程度
- メンテナンス費:無料~60万円程度
■すぐにお墓じまいをした場合の目安:総額30万円~300万円程度
※費用詳細は、こちらの項目を参照
上記を見ると、総額だけで比較するとそこまで違いはないことが分かります。ただし、自分より後の代の維持費用も含めてもっと長い目で見た時には、やはりお墓じまいをした方がかかる費用は少なく済むと言えます。
よって、費用面だけで見ると、お墓じまいをした方がお得であると言えます。しかしここで忘れてはならないのが、お墓じまいは管理権を持つ承継者当人だけの問題でなく、将来的にお墓を承継する予定の子や孫、周囲の親族にも関する問題であるということです。中には、思い入れのあるお墓を撤去したくない、合祀墓に埋葬するのは失礼、といったお考えをお持ちの方もいらっしゃいます。
これらのことから、費用面も大切ではありますが、トラブルを未然に防ぐためにも、最終的には「自分たちがどのように供養を行っていきたいか」を軸に話し合い、全員が納得する形で供養を行うべきと言えるでしょう。また、現在のお墓が寺院にある場合には、早い段階で住職にも相談しておくと安心です。
お墓じまいするには何から始めればいい?具体的な手順とは
本ページでは主にお墓じまいの費用について解説しましたが、実際に行う際には、いくつかの決まった手順があります。
大まかな流れとしては、まずは親族や住職などの関係者へ相談して理解を得、問題なければ新しい納骨先を確保し、移行元と移行先の両方がお墓じまいをできる状態にします。その後、行政手続きを行い、墓石の撤去と新規納骨という流れです。
上記から分かる通り、新たな納骨先が決まらないと墓石の撤去はできません。よって、関係者からの了承を得ることができたら、新たな墓所を探すために、まずは信頼できる石材店にご相談いただくところから始めるとスムーズです。
■お墓じまいの手順について詳しくはこちら
お墓じまいの詳しい手順や注意点、トラブル対策については、こちらのページもご参照ください。
お墓じまいのご相談は、はせがわの「おはかの窓口」へ
はせがわでは、全店舗に「おはかの窓口」を設置しており、お墓専門のプロの相談員がお客様のお悩みに沿って個別サポートいたします。何度ご相談いただいても費用はかかりませんので、お墓じまいをはじめとして、お墓に関するお悩みがある方は、ぜひ一度最寄のはせがわ店舗までお相談ください。
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